パイミオのサナトリウム

パイミオのサナトリウム：機能主義建築の傑作

フィンランドの南西スオミ県、トゥルク近郊の深い森の中に佇むパイミオのサナトリウムは、建築家アルヴァ・アールトによって設計された、結核療養所として知られています。機能主義建築の代表例として、その洗練されたデザインと患者の療養環境を重視した設計は、今もなお多くの人々を魅了しています。現在はトゥルク大学付属の総合病院として、その役割を担っています。

設計と建設

1928年、建築コンペが開催され、翌1929年にアールトの設計案が見事1等入選を果たしました。同年着工し、1933年に完成したこのサナトリウムは、自然と調和した美しい建築物として、フィンランドの建築史にその名を刻みました。アールトは、妻アイノとともに、サナトリウムのために「パイミオ・チェア」という安楽椅子をデザインしました。この椅子は、快適な座り心地だけでなく、機能性も兼ね備えた名作として、現在も多くの人に愛されています。

構成

サナトリウムは、エントランス棟、病室棟、外気浴棟、食堂棟、医師棟、サービス棟などで構成されています。それぞれの棟が機能的に配置され、患者の療養をサポートする設計がなされています。

病室棟：

南側に位置する6階建ての病室棟は、全ての病室が南東を向いているため、朝日を浴びることができます。一方で、西日は避けられるように工夫されています。格子状にデザインされた窓は、自然光を最大限に取り込み、明るい室内環境を実現しています。病室棟の末端には、ガラス張りのエレベーターシャフトが設置され、移動の利便性を高めています。廊下側の壁面には、ル・コルビュジエが提唱した近代建築の五原則の一つである「水平連続窓」が採用されています。最上階には、日光浴や外気浴のためのテラスが設けられています。

エントランス棟:

メインエントランスの車寄せの庇は、左右非対称のデザインが特徴的で、訪れる人に独特の印象を与えます。

その他の棟:

エントランス棟の北側には、食堂棟、医師棟、サービス棟、そして自動車の車庫などが配置されています。食堂は、高い天井と南面の大きな窓により、十分な日光を取り入れる設計がなされています。サービス棟には、煙突の熱を利用して水を加熱する装置があり、当時の技術を知る上で貴重な存在となっています。

設計思想と特徴

アールトは、サナトリウムの設計において、患者の心身の健康を第一に考えました。自然光を最大限に取り入れ、心地よい空間を提供することを目指したのです。機能的な設計だけでなく、素材の質感や色彩、そして細部に至るまで、患者の心を癒すための工夫が凝らされています。パイミオのサナトリウムは、単なる療養所ではなく、患者の人間性を尊重した、アールトの人間愛が詰まった建築物と言えるでしょう。

現在の利用

サナトリウムとしての役目を終えた後、パイミオのサナトリウムは、トゥルク大学付属の総合病院として新たなスタートを切りました。建築としての価値はそのままに、現代医療の拠点として、地域の人々の健康を支え続けています。アルヴァ・アールトの建築思想は、今もなお、多くの人々に影響を与え続けています。

参考資料

Michael Trencher著、平山達訳『アルヴァー・アアルト 建築ガイドブック』丸善、2009年4月。ISBN 978-4-621-08098-6。

外部リンク

公式ウェブサイト

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