パイロット (ロケット)

パイロット (NOTS-EV-1 Pilot)

パイロット（NOTS-EV-1 Pilot）は、別名NOTSNIKとも称される、1958年にアメリカ海軍兵器試験場（Naval Ordinance Test Station、NOTS）によって開発が進められた実験的な使い捨て型ロケットシステムです。このロケットは、当初から衛星攻撃兵器としての機能も想定されており、当時の宇宙空間における軍事利用への関心の高まりを反映していました。

概要

パイロット計画（Project Pilot）の一部として開発された本ロケットは、周回軌道投入を目指した世界初の空中発射ロケットという画期的な試みでした。NOTSは、移動する航空機からロケットを発射することで、地上からの発射に比べてエネルギー効率を高め、より柔軟な軌道投入を可能にすることを目指しました。

試験は集中的に行われ、1958年の7月から8月にかけて、短期間に合計10機が発射されました。しかし、残念ながらこれらの打上げは全て、目標とした周回軌道への到達に失敗しました。公式に軌道に到達し、宇宙物体として登録されたパイロットは一機も存在しません。

特に、初回と3回目の打上げ時には、ニュージーランドにある追跡施設が、宇宙機からと思われる微弱な信号を受信したと報告しています。しかし、この報告は最終的に確証を得られず、パイロットが人工衛星として宇宙物体カタログに登録されることはありませんでした。

度重なる打上げ失敗を受け、パイロット計画は早くも1958年8月には中止が決定されました。計画の後継としては、NOTS-EV-2 カレブ（Caleb）の開発が進められることになります。

本計画に関する情報は、その軍事的な性質などから長らく機密扱いとされていました。計画の詳細が公に明らかになったのは、1994年になってからのことでした。

バリエーション

パイロットロケットには、試験の目的に応じて主に二つのバリエーションが存在しました。

パイロット1: このモデルは、主に大気圏内での飛行特性やシステム試験を行うためのものでした。特徴として、2段目から4段目には実機ではなく、質量のダミーである「バトルシップ」と呼ばれるモジュールが搭載されていました。発射はカリフォルニア州のチャイナ湖にある地上施設から行われました。合計10回の打上げのうち、4回がこのパイロット1による地上発射試験でした。

パイロット2: こちらが周回軌道投入を目指した空中発射バージョンです。発射は、海軍航空ステーション・ポイント・マグーを離陸したF-6A スカイレイ戦闘機が母機となり、高度でパイロット2を切り離すという方法で行われました。10回の打上げのうち、残りの6回がこのパイロット2による空中発射試験でした。

合計10回の試験全てが失敗に終わったパイロット計画は、短命に終わったものの、周回軌道投入を目指した初の空中発射ロケットという、後の宇宙開発につながる革新的な試みを行った点で歴史的な意義を持つプロジェクトでした。その失敗の経験は、その後の同様の開発における貴重な教訓となったと考えられます。

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