使い捨て型ロケット

使い捨て型ロケット（Expendable Launch Vehicle）

使い捨て型ロケット（ELV）は、一度の打ち上げに特化したロケットシステムを指します。2021年現在、スペースシャトルおよびSpaceXのファルコン9やファルコンヘビーのような再利用可能なロケットを除いて、ほとんどのロケットがこの形式に当たります。ELVは、主に宇宙開発の初期から使用されており、その背景には高い推力を効率的に発揮するための設計が求められたことがあります。

なぜ使い捨て型か

宇宙開発業界では、多段式ロケットの使用が一般的であり、これによりロケットの死荷重を最小限に抑え、より高い効率を実現することができます。再使用型ロケットの開発も進められてはいるものの、技術的な課題が多く、故障や再整備のコストも懸念材料です。特に、宇宙へのアクセスコストが問題視されるようになった際、再使用型ロケット（RLV）と比べて、ELVが引き続き重要視されることになりました。それにより、ELVは現在でも人工衛星の打ち上げなどに広く利用されています。

ELVの現状と進化

ヨーロッパの取り組み

1980年、欧州宇宙機関（ESA）とフランス国立宇宙研究センター（CNES）は、最初の商業衛星打ち上げ会社であるアリアンスペースを設立しました。この企業は、アリアンシリーズロケットの製造や販売を行うとともに、1995年には100機目の衛星打ち上げを達成しました。アリアンスペースは、10か国以上の出資者からの資金により、欧州の宇宙市場を支えています。

アメリカの民間開発

1986年のチャレンジャー号事故を契機に、アメリカ合衆国の宇宙政策は民間部門にも焦点を当てるようになりました。1984年には商業打ち上げ法が成立し、これによって民間企業が打ち上げサービスを提供する道が開かれました。また、1990年には、NASAが打ち上げサービスを商業企業から調達することを求める法律が成立し、民間のELVがますます利用されるようになりました。

ロシアの宇宙開発

1994年、ロシアは宇宙関連企業RSCエネルギアを市場に開放し、以降は民間資本が入る形になりました。これにより、ロシアでも使い捨て型ロケットの市場が育つことになります。さらに、エネルギアとクルニチェフが共同でロシアの有人宇宙飛行プロジェクトを推進してきました。

アメリカ政府の支援

1996年、ロッキード・マーティンとボーイングは、進化型使い捨てロケット（EELV）の開発に選定され、アメリカ政府の資金提供を受けることになりました。これは市場の需要に対抗し、コストを低減する目的がありました。現在、デルタIVとアトラスVといったEELVは運用中です。

打ち上げ契約の状況

1995年以降、ロシアのクルニチェフはプロトンロケットを国際的なローンチサービスとして提供しており、エネルギアのソユーズロケットも外部市場に向けて展開されています。また、2003年にはアリアンスペースと複数の企業が協力してローンチサービスを強化する体制を築きました。

最近の統計では、世界中で多くの商業打ち上げ企業が活動を展開し、2021年には18回の商業打ち上げが行われました。これにより、使い捨て型ロケットは依然としてスペースアクセスにおいて重要な選択肢となっています。

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