パウル・レヴィ

パウル・レヴィ：ドイツ共産党の初期を担った政治家

パウル・レヴィ（1883年3月11日 - 1930年2月9日）は、ドイツの政治家であり、ドイツ共産党（KPD）の初期の指導者の一人でした。彼は、ローザ・ルクセンブルクとカール・リープクネヒトが殺害された後、党首に就任し、その後の党の方向性に大きな影響を与えました。

生涯

前半生

1883年、プロイセン王国の裕福なユダヤ人商家の家庭に生まれました。シュトゥットガルトのギムナジウムで学び、1906年にはフランクフルトで弁護士として働き始め、ドイツ社会民主党（SPD）に入党しました。党内ではローザ・ルクセンブルクやカール・リープクネヒトと共に左派を形成し、1913年以降はルクセンブルクの弁護を担当しました。1914年にはフランクフルト市議会議員に選出されています。

第一次世界大戦中には、「国際派」の結成に関わり、1916年にスイスへ移住。カール・ラデックやグリゴリー・ジノヴィエフ、ウラジーミル・レーニンと親交を深めました。レーニンらの革命思想に共鳴し、ドイツへ帰国後、スパルタクス団の機関紙編集者となります。

ドイツ共産党党首として

1919年1月、スパルタクス団蜂起後、ルクセンブルク、リープクネヒトらが殺害されると、その後継としてドイツ共産党の党首に就任しました。レヴィはルクセンブルクの思想を継承し、党内の急進的な一揆主義に反対しました。彼は、議会政治を拒否する従来の党の方針を修正し、国会選挙への参加を提唱しました。これは、党の戦術を柔軟にし、より広範な支持を得るための方策でした。

しかし、この方針は党内の一揆主義者からの強い反発を招き、党員数は大幅に減少しました。1920年3月のカップ一揆時には投獄されています。

1920年、コミンテルンの第2回世界会議にドイツ代表団長として参加しますが、KAPDの代議員の存在に危機感を表明。コミンテルンが提示したイタリア社会党への分裂工作に反対したため、党内での立場が悪化しました。

失脚とその後

1921年3月、ドイツ共産党はハインリヒ・ブランドラーの指導下で「3月闘争」と呼ばれる武装蜂起を計画・実行しましたが、これは失敗に終わりました。レヴィはこれを「一揆主義」と批判し、コミンテルンやボルシェヴィキをも批判したため、党から除名されました。レーニンはレヴィの主張を認めつつも、公然と党を批判したことを「党への裏切り」と見なしました。

除名後、レヴィは共産主義労働者団（KAG）を結成し、その後独立社会民主党（USPD）に参加。USPDが社会民主党（SPD）に合流した後は、SPD内の左派指導者として活動しました。彼はボリシェビキ批判を強め、ナチスに対する批判も積極的に行いましたが、ユダヤ人であったため、右翼勢力からの攻撃を受けました。

1930年2月9日、ベルリンで死去。死因は自宅からの転落とされています。彼の死後、国会では黙祷が捧げられましたが、共産党とナチスの議員はこれを拒否しました。

パウル・レヴィは、ドイツ共産党の初期において重要な役割を果たした政治家であり、その思想と行動は、後のドイツ共産主義運動に大きな影響を与えました。彼の生涯は、革命運動の複雑さと、理想と現実の間の葛藤を浮き彫りにしています。

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