パウロ教会憲法

パウロ教会憲法：1848年のドイツ統一運動と挫折

1848年、フランクフルト国民議会で採択されたパウロ教会憲法（フランクフルト憲法とも呼ばれる）は、統一ドイツを目指した憲法でした。 フランス二月革命の影響を受けたドイツ革命（三月革命）の波に乗り、ドイツ統一運動の高まりの中で生まれたこの憲法は、後のヴァイマル憲法にも影響を与えるなど、ドイツの歴史において重要な位置を占めています。

三月革命とドイツ統一運動の高まり

1848年のフランス二月革命は、ドイツにも大きな影響を与えました。バーデンから始まったドイツ革命は瞬く間に全国に広がり、オーストリアではメッテルニヒが亡命する事態に発展します。この革命は、立憲政治への要求と、同時にドイツ統一への強い意志を反映したものでした。各邦は憲法改正を行い、国民の政治参加を認め、警察国家から法治国家への移行を目指しました。この状況は「三月の成果」と呼ばれます。

ハイデルベルク会議とフランクフルト予備議会

ドイツ統一運動は、1848年3月5日のハイデルベルク会議から本格的に動き出します。そこで、フランクフルトに予備議会を召集し、ドイツ国民自らが憲法制定を行うことが決定されました。この予備議会は3月31日から4月4日まで開催され、5月1日にフランクフルトで憲法議会（国民議会）を召集すること、国民の基本権に関する原則を決定することなどを議決しました。しかし、極左派は、予備議会の進め方に不満を持ち、脱退して直接行動へと移ります。

憲法議会と暫定憲法

予定より遅れて5月18日に召集されたフランクフルト憲法議会は、様々な主義主張を持つ議員たちによって構成されていました。まず、憲法制定までの暫定組織として暫定憲法を制定。この憲法では、「中央権力」として摂政を置き、その下にドイツ統一国家を構想しました。そして、同盟議会の消滅を決定し、摂政選挙が行われ、ヨハン大公が選出されました。しかし、摂政就任と同時に、軍隊の宣誓問題が発生し、革命政府は実質的に兵力を失うことになります。

ドイツ国民の基本権とオーストリア加入問題

憲法議会は、憲法草案の作成に着手し、まずドイツ国民の基本権に関する規定を完成させました。これは後にヴァイマル憲法にも大きな影響を与えます。憲法草案の討議では、オーストリアをドイツ連邦に含めるかどうかの問題が大きな論点となりました。オーストリアは消極的な姿勢を取り続け、最終的には小ドイツ主義（オーストリアを除外）が優勢になります。

元首問題と憲法公布

元首問題も大きな争点となり、様々な意見が飛び交いましたが、最終的に世襲的皇帝を置くことが決定されました。そして、1849年3月28日、パウロ教会憲法が公布されました。この憲法は、自由主義、民主主義、連邦主義を特徴としています。基本権の保障、権力の分立、議会（二院制）、皇帝、裁判所などを規定していました。

皇帝選挙と憲法の挫折

憲法公布後、皇帝選挙が行われ、プロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム4世が選出されました。しかし、彼は様々な理由から皇帝の就任を拒否しました。これにより、憲法議会はオーストリアとプロイセンの両方から見放され、実力を失います。その後、憲法議会はシュツットガルトに移転しますが、最終的に1849年6月18日に解散させられ、パウロ教会憲法は挫折しました。

パウロ教会憲法の意義

パウロ教会憲法は、ドイツ統一運動における重要な試みでした。その自由主義的で民主的な内容は、後のヴァイマル憲法にも継承され、ドイツ民主主義の礎となりました。憲法制定の試みが挫折したものの、ドイツにおける立憲主義と民主主義の発展に多大な影響を与えた歴史的文書と言えるでしょう。

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