パオロとフランチェスカ (シェフェールの絵画)

『パオロとフランチェスカ』は、アリ・シェフェールが1855年に描いた絵画であり、ダンテ・アリギエーリの『神曲』地獄篇に登場する悲劇的な恋人たちの物語を題材としています。

物語の背景

舞台は13世紀のイタリア、ラヴェンナ。グイード・ダ・ポレンタの娘であるフランチェスカ・ダ・リミニは、政略結婚によりジョヴァンニ・マラテスタに嫁ぎます。しかし、フランチェスカはジョヴァンニの弟である美貌のパオロ・マラテスタと許されぬ恋に落ちてしまうのです。ある日、二人が口づけを交わしているところをジョヴァンニに目撃され、激怒したジョヴァンニは二人を剣で刺し殺してしまいます。

絵画の構成

この絵画は、ダンテとウェルギリウスが地獄でパオロとフランチェスカの姿を目撃する場面を描いています。画面は左右に分かれ、左側には明るい光の中に裸身の恋人たちが抱き合い、白いドレープが彼らを包み込んでいます。フランチェスカの左肩甲骨付近とパオロの右胸には、剣で刺された傷跡がかすかに見えます。一方、画面右側には、赤い帽子を被ったダンテと月桂冠を被ったウェルギリウスが、暗い影の中で沈痛な表情を浮かべて佇んでいます。

絵画の解釈

シェフェールは、この絵画を通して、禁断の愛の情熱と悲劇、そしてそれを見つめるダンテとウェルギリウスの視点を通して、人間の業の深さを表現しようとしたのではないでしょうか。恋人たちの苦悩と絶望、そしてそれを見つめるダンテの感情が、見る者の心を揺さぶります。

『神曲』との関連

この絵画は、『神曲』地獄篇の第5歌をモチーフとしています。ダンテはウェルギリウスに導かれ地獄を巡る旅の中で、生前の罪により永遠に苦しみ続ける人々と出会います。パオロとフランチェスカもその一人であり、ダンテは彼らの悲劇的な運命に深く心を痛めます。シェフェールの絵画は、ダンテの『神曲』の世界観を視覚的に表現した作品と言えるでしょう。

まとめ

アリ・シェフェールの『パオロとフランチェスカ』は、禁断の愛、嫉妬、そして人間の業を描いた傑作です。ダンテの『神曲』に触発されたこの絵画は、見る者に愛と悲劇について深く考えさせる力を持っています。

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