パキスタン国際航空268便墜落事故

パキスタン国際航空268便墜落事故の概要

パキスタン国際航空268便の墜落は、1992年9月28日に発生した航空事故で、搭乗していた167人全員が亡くなりました。この事故は、ネパールのカトマンズにあるトリブバン国際空港への着陸進入中に発生したもので、今もなおネパール史上最悪の航空事故として記憶されています。事故が起きたのは、エアバスA300B4-203（機体記号: AP-BCP）が、カラチからカトマンズへ向かう途中でした。

事故の詳細

268便は、パキスタン標準時の午前11時13分にカラチを離陸し、カトマンズに向けて飛行中でした。当時、航空機には南からの着陸許可が与えられ、「シエラ・アプローチ」と呼ばれる降下方法を使用することになっていました。航空機は、カトマンズVORの南41海里の位置通報点「ロメオ」を高度15,000フィートで通過するよう指示されていました。そして、着陸進入に際しては、10 DMEにある位置通報点「シエラ」を高度9,500フィートで通過することが求められていました。

ところが、268便は午後2時30分に位置通報点である10 DMEで交信を行った直後、高度7,300フィートの山の麓に衝突しました。この事故によって、その機体は完全に粉砕され、垂直尾翼は山のふもとで発見されたという悲惨な結果に至りました。

事故の背景

墜落事故の59日前には、タイ国際航空311便がカトマンズの北側の山に墜落し、113人が命を落としています。このことからも、当時のカトマンズ周辺の航空交通の危険性が浮き彫りにされます。

268便には有名な俳優の父親であり、イギリスの詩人である方も搭乗しており、その影響は多くの人々に広がったことでしょう。

調査結果

カナダ運輸安全委員会（TSB）は、事故原因を深く掘り下げるためにコックピットボイスレコーダーを分析しましたが、有益な情報は得られませんでした。しかし、フライトデータレコーダーから得られたデータによると、事故機が降下の各ステップを1ステップ早く開始していたことが理解されました。更には、16 DMEで許可された高度を最大1,000フィートも下回っていたり、10 DMEでは1,300フィートも下回っていたことが判明しました。パイロットは管制官に対し高度報告を正確にしていたものの、事故直前まで管制官からの警告がありませんでした。

事故調査団は、パイロットのエラーを主な原因として指摘しました。特に、雲に覆われた視界の低さや急斜面によって対地接近警報装置の作動が遅れたことが影響していたとされています。また、着陸進入時の計器進入方式図が理解しにくかったことも問題視されました。報告書では、国際民間航空機関（ICAO）に対して航法図の再調査と標準化の促進、さらにカトマンズ国際空港の着陸進入経路の簡素化が求められるべきだとの勧告が行われました。

追悼の意

事故のあった地点の近くには、パキスタン国際航空が建設したPIA park Leleという記念公園があります。この公園は事故の犠牲者を追悼するために設けられ、警備員が配置されて維持管理されています。また、イギリスの慈善団体ウィルキンス・メモリアル・トラストは、犠牲者の家族を支援するために設立され、ネパールでの活動が行われています。

映像化

この事故は、テレビ番組『メーデー!航空機事故の真実と真相』の第18シーズン第1話に取り上げられ、詳細に解説されました。

関連事故

268便の事故は、アメリカン航空965便やガルーダ・インドネシア航空152便、UPS航空1354便墜落事故といった他の航空事故と共通の教訓があると言えるでしょう。これらの事故は、着陸進入中に起こった悲劇であり、航空安全の向上に向けた継続した取り組みの重要性が示されています。

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