パシファエ (衛星)

パシファエ：木星最大の逆行衛星

パシファエは、木星を周回する衛星の1つであり、その特異な性質から天文学者の注目を集めています。木星の衛星の中でも最大級であり、他の小衛星と共に逆行軌道を描くパシファエ群を形成しています。パシファエ群の中で最も大きく、最初に発見された逆行衛星という点で、木星系における特異な存在と言えるでしょう。

発見と命名

パシファエは1908年、フィリベール・ジャック・メロッテによってグリニッジ天文台の観測で発見されました。当初は小惑星として分類され仮符号が与えられましたが、後に木星の衛星であることが確認されました。その名称は、ギリシャ神話に登場するミノス王の妻で、ミノタウロスの母であるパーシパエーに由来しています。発見後、長らくJupiter VIIIと呼ばれていましたが、1975年に正式名称が承認され、その後2000年には現在の綴りPasiphaeに変更されました。

軌道と起源

パシファエは木星から約2363万キロメートル離れた軌道を、約744日かけて公転しています。この軌道は逆行軌道であり、他のパシファエ群の衛星と同様の特徴を示します。パシファエ群の衛星は、木星に捕獲された小惑星が破壊された際に生じた破片が凝集して形成されたと考えられています。パシファエは、その群の中で最大の破片として生き残った母天体の残骸である可能性が高いです。パシファエの軌道は木星と永年共鳴を起こしており、その近木点経度と木星の近日点経度には一定の関係性が存在します。

物理的特徴

パシファエの見かけの等級は16.9と暗く、直径は約60キロメートルと推定されています。密度は約2.6 g/cm³と推定されており、逆行軌道にある衛星の中では最大で、不規則衛星としてはヒマリアとエララに次いで3番目の大きさです。赤外線分光観測の結果、パシファエのスペクトルには特徴的な吸収帯がほとんど見られず、小惑星起源であることを示唆しています。表面の色は灰色で、C型小惑星と類似した特徴を示すことが分かっています。ただし、パシファエ群内の他の衛星、例えばカリロエやメガクリテとは表面の特性に違いが見られる可能性も指摘されています。これは、小惑星の破片が均一な組成ではなかったこと、あるいは衝突や微小隕石の衝突などによる影響を受けた可能性を示唆しています。2002年に行われたマゼラン望遠鏡を用いた観測では、色指数B-V=0.74、V-R=0.38、V-I=0.74が測定されており、これらがパシファエの表面組成や性質を理解する上で重要な手がかりとなります。2003年のジェミニ北望遠鏡を用いた観測でも同様の結果が得られています。

まとめ

パシファエは、その発見から軌道、起源、そして物理的特徴に至るまで、多くの謎を秘めた興味深い天体です。今後も更なる観測データの蓄積と解析を通して、パシファエとその周辺環境、そして木星系の形成過程について、より詳細な理解が進むことが期待されます。パシファエの研究は、太陽系の形成と進化を解き明かす上で重要な役割を果たすと考えられています。

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