パスハ (菓子)

パスハについて

パスハとは、正教会が主に信仰される地域において、特に復活祭の際に作られる伝統的な菓子です。このお菓子は大斎期間中、乳製品や鶏卵の摂取が制限されるため、これらの食材を用いて作られます。クリーチという円筒形のケーキと一緒に作られ、聖大土曜日には教会に持ち寄られます。その後、復活大祭の徹夜祷で成聖されるのが特徴です。料理名の「パスハ」は、正教会の復活祭に由来しています。

パスハの材料と意味

パスハは、主にトヴォログと呼ばれるカッテージチーズ、バター、卵黄から作られており、これらの組み合わせにより独特の味わいや食感が生まれます。この白い色はハリストスの純潔や神の子羊、そして復活の喜びを象徴しています。歴史的には、紀元1000年頃に中央アジアの遊牧民が持ち込んだ乳製品が起源とされており、時を経てロシアの庶民食として定着してきました。また、パスハはレアチーズケーキの祖先とも言われていることがあります。

形状と製法

ロシア正教会の伝統では、パスハは通常、四角錐（ピラミッド）形に成型されます。この形状は教会の象徴であり、ハリストスの墓を表すと考えられています。パスハは「パソチニツァ」と呼ばれる木製の型で作られることが一般的でしたが、近年ではプラスチックなどの現代的な素材の型を使用することも増えてきました。型には乳清が抜けるための穴が開いており、このプロセスによってパスハの固さが決まります。

作り方には、材料を混ぜて鍋で加熱し、型に詰めて時間をかけて重しをかける方法と、加熱せずに冷蔵庫で固める方法があります。さらに、型には四角錐以外にもシャルロット、クグロフ、テリーヌなど、様々な形状があります。

飾り付けと文化的意義

パスハの外装は、アーモンドや砂糖漬けの果物を用いて装飾され、伝統的な宗教的な象徴が描かれます。その例として、ラバルムや八端十字の形、ハリストスの復活を象徴する文字が挙げられます。また、パスハの周りには、彩色された卵が飾られ、この卵も復活のシンボルとして重要な意味を持っています。

パスハに関するその他の情報

18世紀にサンクトペテルブルクに建設された至聖三者教会は、円形の建物がクリーチに、隣接するピラミッド型の鐘楼がパスハに似ているため、「クリーチとパスハ」という呼び名でも知られています。このように、パスハは単なる食文化に留まらず、正教会の行事においても重要な役割を果たしているのです。

参考文献

• - 猫井登『お菓子の由来物語』幻冬舎、2008年。
• - マグロンヌ・トゥーサン＝サマ 著、吉田春美 訳『お菓子の歴史』河出書房新社、2005年。
• - 沼野充義、沼野恭子『世界の食文化〈19〉ロシア』農山漁村文化協会、2006年。

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