パッセージ (フランク・ギャンバレのアルバム)

オーストラリア出身の著名なギタリスト、フランク・ギャンバレが1994年に発表した通算6作目となるスタジオ・アルバムが本作『パッセージ』（原題：Passages）です。彼はこの時期、日本のレーベルであるJVCと契約しており、本作は同契約下で制作された作品としては4作目にあたります。

制作背景と参加メンバー

本作の制作にあたり、ギャンバレはそれまでの自身のバンドメンバーを一新し、まったく新しい布陣でレコーディングに臨みました。参加したサイドマンは、キーボードにオトマロ・ルイーズ、ベースにアルフォンソ・ジョンソン、ドラムスにウォルフレッド・レイズという実力派揃いですが、いずれも彼とは今回が初の共演となりました。また、楽曲によってはブランダン・フィールズがサクソフォーンでゲスト参加しています。ギャンバレ自身はエレクトリックおよびアコースティック・ギターを担当し、一部でボイスも聴かせています。

音楽性

新しいメンバーを迎えたことで、音楽性にも変化が見られます。特にオトマロ・ルイーズによるシンセサイザーやハモンドオルガンのプレイは楽曲に彩りを添え、またギャンバレがクリーン・トーンを多用している点も特徴的です。これにより、前作までと比較してより生々しい響きを持つ部分もあります。自身のルーツであるジャズやロックのエッセンスを基盤に、耳馴染みの良い快適なフュージョン・サウンドが展開されています。

収録曲

オリジナル盤には以下の11曲が収録されました。特記なき楽曲はフランク・ギャンバレによる作曲です。

1. リトル・チャーマー - "Little Charmer" - 5:38
2. 6.8シェイカー - "6.8 Shaker" - 5:52
3. パッセージ - "Passages" - 6:23
4. ホワイト・ルーム - "White Room" (Pete Brown, Jack Bruce) - 4:05
5. D-デイ - "D-Day" - 4:03
6. ナンジオス・ニア - "Nunzio's Near" - 5:19
7. フリー・スピリット - "Free Spirit" - 5:07
8. ワン・ウィズ・エヴリシング - "One with Everything" - 9:14
9. ロクサーナ - "Roxana" - 5:10
10. ウルル - "Uluru" - 5:56
11. アナザー・オルタナティヴ - "Another Alternative" - 8:13

日本盤のみ、イギリスのロックバンド、プロコル・ハルムの著名な楽曲「青い影」（原題："A Whiter Shade of Pale"）のカヴァーがボーナス・トラックとして追加収録されています。

12. 青い影 - "A Whiter Shade of Pale" (Gary Brooker, Keith Reid) - 4:18 (日本盤ボーナス・トラック)

評価

本作に対する評論家の評価は分かれています。音楽評論サイト「オールミュージック」のロバート・テイラーは、5点満点中2.5点と比較的厳しい評価を下しました。彼は、収録曲の多くが創造性や斬新さに欠け、あくまでギャンバレの驚異的なギター・ソロを引き立てるための器に過ぎないと感じたようです。また、オトマロ・ルイーズのキーボード参加やクリーン・トーンの多用によっていくらか生々しさは感じられるものの、作品全体としてはまとまりに欠け、フュージョンやコンテンポラリー・ジャズの熱心なリスナーが強い興味を持つ可能性は低いと指摘しています。

一方、『CDジャーナル』のミニ・レビューでは、肯定的な意見が述べられています。ここでは、ジャズやロックといったギャンバレの音楽的ルーツを基盤とした、耳馴染みの良い快適なフュージョン・サウンドがたっぷりと収められていると評されています。

『パッセージ』は、新しいメンバーとの共同作業により制作されたフランク・ギャンバレの意欲作ですが、その評価は評論家によって分かれる結果となりました。心地良いフュージョンとして受け入れられる側面もあれば、創造性や構成の面で課題を指摘される側面もある、興味深い作品と言えるでしょう。

もう一度検索