パテベビー

パテベビー: 小型映画システムの先駆け

パテベビー（フランス語: Pathé-Baby）は、1922年にフランスのパテ社によって開発された9.5mmフィルムの映画システムで、特に家庭向け映画文化の発展に寄与しました。このシステムは、個人が映画を楽しむためのフィルム、撮影機、映写機を提供するもので、小型映画の主流として広く受け入れられました。

パテベビーの歴史的背景

パテベビーは、1922年にフランスで発表され、その後にさらに小型化されたパテキッドや、電動式のパテリュックス映写機が次々と登場しました。特に、手回し式から電動式への移行は、上映の利便性を大きく向上させました。

日本におけるパテベビーの導入は、1923年にさかのぼります。東京・日本橋の髙島屋東京支店が玩具売場で初めて販売を開始したものの、関東大震災による店舗の消失の影響で一時中断。翌1924年、東京・銀座の伴野文三郎商店が5台の映写機を輸入し、日本市場への再導入が始まりました。

小型映画の隆盛と影響

パテベビーの普及に伴い、日本国内での小型映画の制作と上映が大いに盛り上がりました。1927年には、日本アマチュア・シネマ・リーグという全国組織が設立され、さらには1929年に初めての全国規模の個人映画コンテストが開催されました。このコンテストでは、パテベビーや16mmフィルムを用いた作品が取り上げられ、多くのアマチュア映画製作家に舞台が提供されました。

家庭でのパテベビーの映写機の普及は、マキノ・プロダクションや松竹キネマなどの映画会社に影響を及ぼし、劇場用映画の短縮版が家庭向けに制作、販売される事態を招きました。これらの短縮版は、戦争により多くが失われた戦前映画の貴重な復元素材として再評価されています。

技術の進化と終焉

伴野商店は、パテベビーのフィルムに対応する国産の「アルマ映写機」を開発し、1935年には名古屋のエルモ社が他のフィルム規格との互換性を持つ映写機を発売しました。これにより、日本国内での映画制作環境がさらに整備されました。

しかし、1941年に太平洋戦争が始まると、フィルムの供給が厳しくなり、1945年の終戦後には8mmフィルムシステムが小型映画の主流へと取って代わることになりました。このような流れを受けて、パテベビーと9.5mmフィルムの時代は終焉を迎えました。

まとめ

パテベビーは、その登場から家庭における映画の楽しみ方を大きく変え、個人映画文化の発展に寄与した重要なシステムでした。戦前の作品や短縮版は今も貴重な文化財として評価され、映画史の一コマとして多くの人に語り継がれています。

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