パトリック・デュポン

パトリック・デュポンは、1959年3月14日にパリで生まれ、2021年3月5日に62歳で亡くなったフランスのバレエダンサーです。彼はパリ・オペラ座バレエ団の元エトワールであり、芸術監督も務めました。

幼少期からバレエに才能を発揮し、8歳でバレエを始めました。マックス・ボゾニなどに師事し、1971年にパリ・オペラ座バレエ学校に入学しました。在学中から、そのずば抜けた才能と奔放な言動で有名になり、「enfant terrible（恐るべき子ども）」と称されました。

1975年にパリ・オペラ座バレエに入団し、翌年にはヴァルナ国際バレエコンクールで金賞と特別賞を受賞しました。1978年にプルミエ・ダンスールに昇進し、1979年にはジョン・ノイマイヤーが彼のために振り付けた『ヴァスラフ』を踊って絶賛を博しました。1980年には、当時史上最年少の21歳でエトワールに任命されました。オペラ座だけでなく、世界中のバレエ団にも数多く客演し、その驚異的なテクニックと圧倒的な存在感、親しみやすいキャラクターで、絶大な人気を誇りました。

彼のレパートリーは非常に幅広く、『ドン・キホーテ』のバジルや『海賊』のコンラッドのような超絶技巧を要するものから、『ジゼル』や『ロミオとジュリエット』、モーリス・ベジャール版『ボレロ』などのシリアスな作品、『長靴をはいた猫』のようなコミカルなものまで、多彩な役柄を演じました。ベジャールの『サロメ』では、両性具有の魅力も放ちました。また、映画出演やレコードのリリースなど、バレエの枠にとらわれない活動でも話題となりました。

1987年にはフランス・ナンシーバレエ団の芸術監督に就任し、1989年にはパリ・オペラ座の芸術監督（エトワール兼任）に就任しました。マリー＝クロード・ピエトラガラをエトワールに抜擢し、レパートリーに現代作品を取り入れるなど、積極的な改革を行いましたが、上層部との対立が表面化し、1995年に退任を余儀なくされました。

1998年にオペラ座を離れてからは、病気や事故などのアクシデントに見舞われ、活動は断続的になりました。2008年のパリ公演を最後に第一線を退くことを表明しました。その後は、後進の指導にあたる傍ら、テレビやチャリティ番組にも出演するなど、幅広く活躍しました。2000年には自伝『パリのエトワール』を出版しました。

彼の死因は、パートナーであった振付師のレイラ・ダ・ロシャが女性誌のインタビューで肺がんであったことを明かしました。パトリック・デュポンは、その卓越した才能と情熱で、バレエ界に大きな足跡を残しました。

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