パドヴァの植物園

パドヴァ植物園は、イタリアのパドヴァ大学に附属する植物園であり、世界遺産にも登録されている歴史的な場所です。

パドヴァと大学の歴史

パドヴァは、ヴェネト州に位置し、ヴェネツィアから西に約30kmの距離にあります。この都市には、1222年に創立されたパドヴァ大学があり、イタリアで2番目に古い大学として知られています。特に医学や自然科学分野で高い評価を受けており、ガリレオ・ガリレイ、ダンテ・アリギエーリ、フランチェスコ・ペトラルカといった著名な学者や芸術家が教鞭をとり、ニコラウス・コペルニクスもここで学んだことで有名です。

植物園の設立と特徴

世界遺産に登録された植物園は、植物学者フェデリコ・ボナフェーデが構想し、建築家アンドレア・モロニが設計しました。1545年5月29日にヴェネツィア共和国議会によって設立が許可され、同年7月7日にはジュスティーナ修道院の一部を植物園として開園しました。これは、研究目的の大学付属施設としては世界で最も古い植物園とされています。

植物園の敷地面積は2.19ヘクタールで、創設当時の設計による庭園が残っています。庭園は円形を基調とし、主に4つのエリアに区分されています。この設計は、植物を科学的に分類し、研究するための配置を示唆しており、当時の植物学へのアプローチを反映しています。

歴史的な植物と著名な人物

植物園内で最も古い植物は、1585年に植えられたヤシの木です。このヤシは「ゲーテのヤシ」とも呼ばれ、1786年にこの地を訪れたゲーテが、このヤシの木を見て独自の自然観を得たと伝えられています。また、多くの有名な植物学者がこの植物園の「プラエフェクトゥス」（園長）を務めました。例えば、ミズアオイ科の学名「Pontederiaceae」は、元園長のジュリオ・ポンテデーラに由来するなど、彼らの科学的な業績にちなんで名付けられた植物も存在します。

さらに、この植物園は、ヨーロッパで初めてヒマワリの花を咲かせることに成功し、イタリアで初めてジャガイモの栽培を行った場所としても知られています。これらの業績は、当時の植物学の発展に大きく貢献したことを示しています。

世界遺産登録と登録基準

パドヴァの植物園は、1997年にユネスコの世界遺産に登録されました。登録の際には、以下の基準が満たされたとされています。

• - (2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。：この基準は、植物園のデザインと構造が、植物学の発展における重要な転換点を示していることを意味します。植物の配置や分類方法、研究施設としての役割は、当時の科学的思考の進化を反映しています。
• - (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。：この基準は、パドヴァの植物園が、学術的な植物園の歴史の中で、独自の文化的な伝統と実践を示す、稀有な証拠であることを強調しています。

パドヴァ植物園は、その長い歴史の中で、植物学研究の重要な拠点としての役割を果たし、現在もなお、その遺産を後世に伝えています。

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