パピプペンギンズ

パピプペンギンズは、アートディレクターの戸田正寿とイラストレーターのひこねのりおによって生み出された、二羽の愛らしいペンギンのキャラクターです。1980年代にサントリーの缶ビールのテレビコマーシャルに起用されたことで一躍有名になり、その人気は社会現象とも言えるほどになりました。

誕生とブレイク

彼らが初めて登場したのは1983年のサントリー「サントリーCANビール」のCMでした。叙情的で少し物悲しさも帯びた独特のアニメーションと、松田聖子の「SWEET MEMORIES」をはじめとする当時のヒット曲をBGMに採用した斬新な演出、そして所ジョージによるユーモラスなナレーションが組み合わさったこのCMシリーズは、瞬く間に大きな反響を呼びました。クールでありながらどこか哀愁漂うペンギンたちの姿は、多くの人々の心を捉え、単なるCMキャラクターを超えた存在となりました。

彼らの爆発的な人気を受けて、1985年には劇場用アニメーション映画『ペンギンズ・メモリー幸福物語』が公開されました。この作品は、戦争の傷を負った帰還兵のペンギン、マイクと、歌手を夢見る娘ジルの出会いを軸に描かれた物語です。

キャラクターと現在

主要なキャラクターは、男の子の「パック」と女の子の「ピッキー」です。二羽で登場することが多く、様々なシチュエーションで彼らの日常や心模様が描かれました。

彼らの版権は、2005年 9月以降は芸能事務所のホリプロが管理しています。時代は移り変わりましたが、パピプペンギンズの人気は根強く、現在も様々な企業とのコラボレーションを通じて、キャラクターグッズの販売が続けられています。また、かつてのような頻繁さはありませんが、不定期にテレビコマーシャルなどに登場し、その健在ぶりを見せています。

主なメディア登場歴

コマーシャル

彼らは主にテレビコマーシャルで活躍してきました。

サントリー「サントリーCANビール」（1983年 - 1985年）：彼らを一躍有名にした代表作。松田聖子の「SWEET MEMORIES」などが使用されました。
北陸電力「『電化の暮らし』キャンペーン」（2001年頃）：生活インフラ関連のキャンペーンに起用。
金冠堂「金柑のど飴・キンカンクールスプレー」（2004年）：医薬品のCMに登場。
KDDI（au）「au My Page」（2006年）：通信サービスのキャンペーンで使用。
サントリー「ボスシルキーブラック『ペンギン回想編』」（2010年）：初期のCM映像が再利用され、話題となりました。
ネッツトヨタ福井（2015年）：地方企業のCMやポスターに登場。
福井経編興業（2023年、「こどもたちの未来のために」篇）：映像制作は福井テレビ開発が担当。

この他、かつては学習研究社（学研）から出版された読み物の表紙を飾るなど、様々な媒体に登場しています。

映画

『ペンギンズ・メモリー幸福物語』（1985年 6月22日公開）：初の長編アニメーション映画化作品。傷ついた心を持つペンギン・マイクと歌手志望のジルを中心とした、愛と再生の物語です。

キャラクターグッズ展開

CMでの人気を受けて、多岐にわたる商品が発売されました。1984年にはサントリー自身から彼らがデザインされた缶ビールや瓶ビールが販売され、ヒット商品となりました。また、1983年にはサントリーショッピングクラブ（現：サントリーマーケティング&コマース）が、「PenguinFamily」名義で文具などを販売しています。

1990年代には「ペンギンパラダイス」の名称での商品展開も見られました。2000年代前半には、久寿屋（久月）からぬいぐるみが発売されており、男の子のペンギンは「プック」という別の名称が使われたこともあります。

近年でも新たなコラボレーション商品が登場しています。2019年には「湘南ロックンロールセンターAGAIN2019」のマスコットに採用されTシャツが登場。同年にはniko and...、2022年にはフェリシモとコラボレーションしたグッズが発売。2023年にはケンエレファントからカプセルトイ「パピプペンギンズ・フィギュアコレクション」が発売されるなど、幅広いジャンルで商品展開が続いています。

企画展での紹介

2022年 7月15日から8月31日まで福井県立美術館で開催された「戸田正寿展」では、戸田正寿氏の代表的な仕事の一つとしてパピプペンギンズも展示されました。会場出口には、福井テレビのマスコット「EarEarちゃん」との共演ボードが記念撮影スポットとして設置され、好評を博しました。

時代を超える存在

ペンギンの生態を研究する上田一生氏は、自身のブログ（2011年）でパピプペンギンズ（「サントリーペンギン」と呼称）の流行に触れ、同時期に話題となった「コーポレットペンギン」との比較や、人気に便乗して多数出回った模倣品の存在についても言及しています。コーポレットペンギンの偽物に関しては裁判沙汰になった事例もあったとのことです。

バブル景気を彩ったキャラクターとして、そしてその後も形を変えながら愛され続けているパピプペンギンズは、特定の世代にとっては懐かしい存在であり、新たな世代にとっては新鮮なキャラクターとして、今なお多くの人々に親しまれています。

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