パブリック・エナミー

パブリック・エナミー（Public Enemy）

パブリック・エナミーは、1985年にニューヨークのロングアイランドで結成されたヒップホップグループで、特にその歌詞における社会的・政治的なメッセージで知られています。彼らは政府や権威に対する批判的な視点を表現し、アメリカの多種多様な政治事情や社会的課題に積極的に言及してきました。音楽のスタイルは革新的で、ヒップホップ・シーンに計り知れない影響を与えています。彼らは「ローリング・ストーン」が選ぶ歴史上最も偉大なアーティスト100組の中で第44位にランクインされています。

結成と初期の歴史

パブリック・エナミーは、チャックDのフリースタイルがリック・ルービンに見いだされたことから始まりました。当時、デフ・ジャムのグループとして発展段階にあったペンは、1987年にデビューアルバム『YO!BUM ラッシュ・ザ・ショウ』を発表し、その後1988年にリリースしたセカンド・アルバム『パブリック・エナミーII (It Takes a Nation of Millions to Hold Us Back)』によって更なる成功を収めました。このアルバムは『Don't Believe the Hype』を含むヒット曲を生み出し、チャートでも高評価を得ました。さらに、1990年にはサードアルバム『フィアー・オブ・ア・ブラック・プラネット』を発表し、これが彼らの出世作ともなり、アメリカ国会図書館の重要保存録音物に登録される運命をたどります。

このアルバムに含まれる「911 is a Joke」や「Fight the Power」は、特に社会的な問題への鋭い批判が込められており、「Fight the Power」は映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』のテーマ曲としても知られています。

音楽スタイルと影響

パブリック・エナミーは、その音楽スタイルにおいて新しい試みに挑戦してきました。特に、プロデューサーユニット「ボム・スクワッド」による多様なサンプリングの利用や、ラップにおける政治的かつ社会的なテーマの取り入れが特徴です。評論家スティーヴン・トーマスは、彼らの音楽を評価し、「前例のないような凶暴なサウンド」を形作ったと述べています。

パブリック・エナミーは、ヒップホップの枠を超えて、ロックやメタルとのコラボレーションも行いました。1991年には、メタルバンドのアンスラックスとともに演奏し、ジャンルを横断する新しいスタイルを生み出しました。

論争と影響力

彼らはその活動の過程でさまざまな論争に直面しました。特に、グループの一員であるプロフェッサー・グリフの反ユダヤ発言が問題視され、批判を受けました。グループはその後、このような問題への意識を高め、より平和的なメッセージを発信する努力を続けています。PEは、ファイル共有の積極的な支持者でもあり、著作権や音楽配信のあり方についても独自の見解を持っています。

現在の活動

最近では、メンバーのフレイヴァー・フレイヴがリアリティ番組に出演したり、彼らの音楽が映画やイベントで取り上げられることが増えています。2004年以降も、新しいアルバムやプロジェクトに取り組み続け、音楽界での影響力を維持しています。2013年にはロックの殿堂にも名を刻み、彼らの功績が広く認められています。

このように、パブリック・エナミーは社会的・政治的問題を強く意識した音楽を通じて、音楽業界のみならず社会全体にも影響を与え続けています。

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