パベル・スロジル

パベル・スロジル（Pavel Slozil, 1955年12月29日 - ）は、チェコスロバキア（現チェコ）のオパヴァ出身の元男子プロテニス選手です。現役時代はダブルスで際立った成績を収め、ATPツアーでシングルス2勝、ダブルス30勝を記録しました。自己最高ランキングはシングルス12位、ダブルス4位です。ダブルスでは、トマシュ・スミッドなどの選手とペアを組み、数々の好成績を残しましたが、シングルスでは1982年全仏オープンの3回戦進出が最高でした。

スロジルの名前が広く知られるようになったのは、1986年に母国チェコのプラハで開催された大会でのことでした。当時、台頭著しかったシュテフィ・グラフの父親、ペーター・グラフと出会い、ペーターから娘のコーチ就任を打診されたのです。ペーターは、スロジルがヨーロッパらしい職人気質と忠誠心を持ち合わせていると評価していました。選手としてのキャリアに陰りが見え始めていたスロジルにとって、この話はまさに渡りに船でしたが、同時に2つの問題点がありました。

1つは、スロジルが妻子持ちであり、グラフに同行してツアーを回るには、長期間家族を置いていかなければならないことでした。2つ目は、共産主義国家であるチェコスロバキアの選手が、西側の選手を長期間指導することに対する政治的な是非でした。このうち、2つ目の問題については、グラフの所属するテニスクラブ「ロートヴァイス・ベルリン」とチェコスロバキア政府の代理人「プラハ・スポーツ」が協議し、「個人的な契約」というよりも「国家による派遣」という形で決着しました。

様々な困難を乗り越え、スロジルは1987年からグラフのコーチに就任しました。すると、グラフは世界チャンピオンへと駆け上がり、同年8月16日には世界ランキング1位を獲得。翌1988年には、19歳にして女子テニス史上3人目の「年間グランドスラム」を達成するなど、数々の記録を打ち立て、スロジルもその成功を支え続けました。

しかし、1990年になると、モニカ・セレシュの台頭やガブリエラ・サバティーニの活躍、そしてグラフの身の回りで起きたスキャンダルなどが重なり、2人の師弟関係に変化が生じ始めます。1991年3月11日、セレシュがそれまで186週間ランキング1位を保持していたグラフから女王の座を奪い、グラフはスランプに陥ります。その結果、ペーター・グラフは1991年末をもってスロジルのコーチ解任を決定。スロジルはしばらくプロのツアーから離れることになりました。

その後、スロジルはジェニファー・カプリアティやアンナ・クルニコワといった選手のコーチも務めています。

パベル・スロジル - ATPツアーのプロフィール （英語）

パベル・スロジル - デビスカップのプロフィール （英語）

パベル・スロジル - 国際テニス連盟

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