パラミツ

パラミツ：世界最大の果実とその多様な利用

パラミツ（学名：Artocarpus heterophyllus）は、クワ科パンノキ属に分類される常緑の高木です。インドからバングラデシュにかけてが原産とされ、東南アジア、南アジア、アフリカ、そしてブラジルなど、熱帯・亜熱帯地域で広く栽培されています。英語ではジャックフルーツ（Jackfruit）として知られ、その巨大な果実は世界最大級として有名です。

多様な呼び名

パラミツは地域によって様々な呼び名を持ちます。バングラデシュではカタール、インドではカタル、インドネシアやマレーシアではナンカ、フィリピンではランカ、タイではカヌーン、ベトナムではミッなど、それぞれの言語で親しまれています。日本では漢語由来の「波羅蜜」の他に、マレー語のナンカに由来する「南果」という呼び名も存在します。また、同属のパンノキとの区別のために「長実パンの木」と呼ばれることもあります。英語名であるジャックフルーツは、マラヤラム語の「Chakka」がポルトガル語を経て英語に借用されたものと考えられています。

特異な形態と生態

パラミツは常緑の高木で、葉の形は幼木と成木で大きく異なります。幼木の葉には切れ込みがありますが、成木になると長楕円形になります。この葉の形の違いは、学名（種小名）のheterophyllus（異形葉）に反映されています。雌雄同株で、雄花序は枝の先につき、雌花序は幹に直接つく幹生花という特徴を持っています。

その果実は、長さ70cm、幅40cm、重さ40～50kgに達することもあり、世界最大の果実として知られています。形は歪んだ球形や楕円形が多く、中には円柱形のものも見られます。表面には数mmのいぼ状の突起があり、熟すと黄色く色づき、強い甘味と独特の香りを放ちます。果実はクワ科の特徴である集合果で、多数の花が合着して形成されます。食用となるのは、繊維状の淡黄色から黄色の果肉（仮種皮）と種子です。種子は約2cmほどのやや長円形で、これも食用となります。パラミツは成長が早く、実生から3年で結実することもあります。

ユニークな送粉体系

近縁種のコパラミツ(A. integer)では、ユニークな送粉体系が報告されています。コパラミツの雄花序にはコウガイケカビ属の菌が共生し、キノコバエの一種がその菌を餌として訪花し、同時に花粉を媒介します。このキノコバエは、雌花序にも同じ臭いに誘引されて飛来し、花粉を運搬するのです。

多様な利用法

熟したパラミツの果肉は甘く、生食できます。みずみずしさは少ないものの、弾力と粘り気のある独特の食感が特徴です。未熟な果実は野菜として扱われ、タイ料理、ベトナム料理、インドネシア料理などでは煮物や炒め物などに利用されます。種子は、焼くか茹でるかして食べることができます。

熟す前の果肉は、加熱することでマグロや牛肉のような食感になり、代替肉としても利用されています。欧米や日本では、輸入された生の果実の他、シロップ煮缶詰、チップス、乾燥果実などが流通しています。葉や根は薬用として利用され、木材は建材、家具、仏像、印鑑、さらにはガムランなどの楽器にも使われます。また、材から黄色い染料を抽出し、仏僧の法衣を染めるなどにも用いられてきました。

文化との関わり

パラミツは、単なる果樹としてだけでなく、人々の生活や文化と深く関わってきました。その名前が台風の名前（ナンカー、カーヌン）にも用いられていることは、その文化的影響力の大きさを示しています。今後も、その多様な利用法とユニークな生態から、パラミツは私たちの生活に様々な形で貢献し続けるでしょう。

もう一度検索