パラヴェーン作戦

パラヴェーン作戦：戦艦ティルピッツ撃破への道

パラヴェーン作戦は、第二次世界大戦中にイギリス軍が実行した、ドイツ戦艦ティルピッツに対する航空攻撃作戦です。1944年9月15日、イギリス空軍のランカスター爆撃機が、当時最新鋭の超大型爆弾トールボーイを搭載し、ソ連領内から発進、ティルピッツを大破させました。この攻撃により、ティルピッツは戦闘能力を大きく損ない、その後のイギリス軍による撃沈作戦を成功に導く上で重要な役割を果たしました。

作戦の背景

独ソ戦が開始されると、連合国はソ連への支援物資輸送のため、ノルウェー北方の海域に船団を派遣しました。この船団にとって、ノルウェー北部に配備されていたドイツ戦艦ティルピッツは、まさに脅威でした。イギリス軍はこれまでにも、X艇による爆破作戦（ソース作戦）や空母艦上機による攻撃（タングステン作戦）など、様々な手段でティルピッツへの攻撃を試みてきましたが、いずれも撃沈には至りませんでした。

そこで、イギリス軍は新たな攻撃手段として、ソーミュール鉄道トンネルやフランスのUボート基地など、堅牢な目標への攻撃で実績を上げていたトールボーイに着目しました。トールボーイは、その巨大な破壊力で、ティルピッツのような大型戦艦にも大きなダメージを与えられると考えられたのです。

作戦計画

パラヴェーン作戦には、イギリス空軍の第9爆撃中隊と第617爆撃中隊が参加しました。作戦の実行にあたり、大きな課題となったのが、ティルピッツが停泊していたコーフィヨルドが、イギリス本土から遠く離れており、爆撃機の航続距離を超える点でした。そこで、イギリス軍はソ連政府の協力を得て、ソ連領内のヤゴドニスクを中継基地として利用することにしました。爆撃機はまずヤゴドニスクへ向かい、そこで燃料を補給した後、ティルピッツを攻撃、帰路も再びヤゴドニスクを経由してイギリスへ帰還するという計画でした。

作戦の経過

1944年9月11日、第9爆撃中隊と第617爆撃中隊のランカスター38機と、資材輸送用のB-24が2機、写真撮影用のランカスター1機が、イギリスからヤゴドニスクに向けて出発しました。しかし、悪天候のため、ヤゴドニスクへの到着は困難を極めました。特に、ヤゴドニスクが雲に覆われていたため、多くの機体が目的地を見つけることができず、6機が失われるという痛ましい結果となりました。

9月15日、ヤゴドニスクから28機のランカスターが発進し、ティルピッツへの爆撃を開始しました。28機のうち、トールボーイを搭載していたのは21機で、残りは機雷などを搭載していました。しかし、爆撃時、ティルピッツは煙幕に覆われており、目標を正確に捉えることができませんでした。そのため、トールボーイを搭載したまま帰還した機もありました。戦闘中、ランカスターに大きな損害はありませんでしたが、帰路に1機が墜落しました。

作戦の結果

パラヴェーン作戦において、トールボーイ1発がティルピッツに命中しました。爆弾は右舷前部に命中し、巨大な穴を開けました。爆発の衝撃は艦全体に広がり、深刻な損傷を与えました。その結果、ティルピッツは全速航行が不可能となり、完全な修理も困難と判断されました。事実上戦闘艦としての機能を失ったティルピッツは、その後、トロムソ付近の浅瀬へ移動し、浮き砲台として利用されることになりました。

パラヴェーン作戦は、ティルピッツを撃沈するには至りませんでしたが、その後のイギリス軍によるカテキズム作戦（1944年11月）での完全な撃沈を大きく手助けしました。この作戦によって、ティルピッツは長きにわたる脅威から解放され、連合国の勝利に貢献することになったのです。

参考文献

レオンス・ペイヤール、『戦艦ティルピッツを撃沈せよ！』、長塚隆二 訳、早川書房、1976年
John Sweetman, Tirpitz :Hunting the Beast, Sutton Publishing, 2004, ISBN 0-7509-3755-6

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