パリスの審判

パリスの審判

「パリスの審判」とは、ギリシャ神話の中で特に重要な逸話であり、トロイア戦争の引き金となった事件です。この物語は美、権力、そして嫉妬が絡む複雑な情景を描き出しています。

物語の背景

トロイアの王プリアモスには、パリス（アレクサンドロス）という息子がいました。彼は神々によって最も美しい女神を選ぶ役割を与えられます。神々の間で美しさを争わせる理由は、不和の女神エリスが祝宴に招かれなかったことに起因しています。その結果、エリスは「最も美しい女神へ」と記された黄金の林檎をテーブルに投げ入れ、彼女自身の存在感を示しました。

三美神の対峙

林檎を巡って、ヘーラー（主権の女神）、アテーナー（知恵の女神）、アプロディーテー（美の女神）の三人が自らの美しさを称えながら、パリスにその判断を委ねました。ヘーラーは「アジアの君主の座」を、アテーナーは「戦いにおける栄光」を約束しましたが、最終的にアプロディーテーが「最も美しい女」を与えるという約束をすることで、パリスの心をつかむことに成功しました。

この「最も美しい女」とは、すでにスパルタ王メネラーオスの妻であるヘレネーを指します。この選択が、後にトロイア戦争を引き起こすことになります。

トロイア戦争への影響

戦争が始まると、ヘーラーとアテーナーはパリスに対して強い憎悪を抱き、ギリシャ側に味方します。彼女たちはパリスの決断が自らの運命を狂わせたと考えるのです。古い伝承では、パリスがアプロディーテーの庇護の下にヘレネーを略奪したとされますが、ヘレネーがゼウスの娘として半神の存在であったため、嫉妬を避けるためにパリスが略奪したのは彼女に似せた雲の像であるという説も存在します。

比較神話と三機能仮説

フランスの比較神話学者ジョルジュ・デュメジルは、パリスの選択が古代の三機能仮説を反映していると考えています。ここでは、ヘーラーが「主権」、アテーナーが「戦闘」、アプロディーテーが「生産」として、人間社会の構成要素を象徴しているといいます。パリスが生産の概念に寄り添いながらもアプロディーテーに傾くことで、結果としてトロイアの滅亡を招いたとされています。

芸術における「パリスの審判」

この神話は多くの画家によって描かれ、様々な表現方法で美の競争を再現しています。絵画においては、三人の女神が美男とされるパリスの前に並び、各々が自らの美を競い合う姿が描かれています。男の人物や他のシンボル（アトリビュート）によって、神々の特性を識別することができる作品が数多く残されています。

アテーナーは武器やフクロウを伴い、アプロディーテーは双子のエロースを従え、ヘーラーは孔雀や王冠を身につける姿で描かれていることがよくあります。こうした視覚的要素が、神話の物語をより一層魅力的なものにしているのです。

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