パリ協定 (ベトナム和平)

パリ和平協定の概要

パリ和平協定（英：Paris Peace Accords）は、1973年1月27日にフランス・パリで調印されました。この協定は、ベトナム戦争を終結させるために、ベトナム民主共和国（北ベトナム）、ベトナム共和国（南ベトナム）、南ベトナム共和国臨時革命政府、そしてアメリカ合衆国の間で交わされた重要な合意です。正式には「ベトナムにおける戦争終結と平和回復に関する協定」と呼ばれ、全ての関係国にベトナムの独立、主権、統一性を尊重するよう求めました。

開催までの経緯

協定に至る過程は簡単ではありませんでした。事前の協議では、南ベトナム解放民族戦線（NLF）の地位を巡り、激しい議論が繰り広げられました。南ベトナム政府は、NLFが北ベトナムの傀儡であると主張し、会議への参加を拒否しました。一方、北ベトナムとNLFは、南ベトナム自身がアメリカの傀儡政権であると主張し、双方の見解は平行線をたどりました。最終的には、NLFが南ベトナム共和国臨時革命政府を樹立し、主権国家としての体裁を整えることで会議への参加が認められることとなりました。

会議における対立

しかし、パリ和平会議への参加までの道のりは依然として厳しかったのです。北側と南側は、各代表団が使用するテーブルの形状に関しても激しい論争を繰り広げました。北側は全ての代表が平等であることを示すために円形テーブルの使用を主張したのに対し、南側は南北の対称性を強調するために長方形テーブルを選ぶべきだと主張しました。数か月もの間、双方は譲らず会議は進展を見せませんでした。最終的には、北ベトナムと南ベトナムの代表が円形テーブルに着き、アメリカと臨時革命政府の代表は周囲の長方形テーブルに配置されることで妥協に至りました。

協定の調印

協定は1973年1月27日に正式に調印されました。この調印を契機に、すべての参加国には「1954年のジュネーヴ協定に基づき、ベトナムの独立・主権・統一性・領土を尊重する」ことが求められました。これを受けて、アメリカのニクソン大統領は29日にベトナム戦争終結を宣言し、またアメリカ軍は3月29日までに南ベトナムから撤退を完了しました。この和平合意ができたことを受けて、アメリカのヘンリー・キッシンジャー特使と北ベトナムのレ・ドク・ト特使は、1973年のノーベル平和賞を受賞しましたが、レ・ドク・トは「ベトナムにはまだ平和が訪れていない」と述べ、受賞を辞退しました。

協定に対する反発

しかし、南ベトナム政府のグエン・バン・チュー大統領を始めとする指導者たちは、協定に対し強く反対しました。理由は、北ベトナム軍が実効支配している地域から撤退する義務がないためです。アメリカ軍の撤退後、北が協定に反し南に侵攻する可能性が十分にあり、その場合に南ベトナムは抵抗できる力を持たなくなってしまう懸念がありました。

戦争の終結

結局、戦争は終わることはなく、1975年3月には北ベトナム軍がホー・チ・ミン作戦を開始しました。そしてついに、同年4月30日にサイゴンが陥落し、南ベトナム政府は無条件降伏を余儀なくされました。翌年の7月には南北が統一され、新たにベトナム社会主義共和国が成立しました。

協定の調印者たち

協定には様々な関係者が名を連ねました。ベトナム共和国（南ベトナム）の外相チャン・ヴァン・ラム、アメリカ合衆国代表のヘンリー・カボット・ロッジJr.（元南ベトナム大使）、国務長官ウィリアム・P・ロジャーズ、北ベトナムの外相グエン・ズイ・チン、さらには臨時革命政府の外相グエン・チ・ビンなどがいます。また、事前協議の中心的存在には、ヘンリー・A・キッシンジャー氏とレ・ドク・ト氏が名を挙げられます。彼らの交渉活動は、最終的な調印に至るまでの大きな要因となりました。

この協定は、国際政治や戦争終結のあり方において今なお重要な事例として評価されています。

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