ジュネーヴ協定

ジュネーヴ協定

ジュネーヴ協定は、1954年にスイスのジュネーヴで開催されたインドシナ和平会談で締結されたもので、第一次インドシナ戦争を終結させるための重要な合意です。この協定は、ベトナムを南北に分断するきっかけとなりましたが、戦時国際法に関連するジュネーヴ条約とは異なるものです。

背景

1945年、日本の降伏により生じた混乱の中で、ベトナム独立同盟（ベトミン）は八月革命を起こし、ハノイでベトナム民主共和国の独立を宣言しました。しかし、第二次世界大戦後、フランスはインドシナへの復帰を図り、この結果、第一次インドシナ戦争が勃発しました。ベトミンは都市部を追われ、農村でのゲリラ戦を展開することを余儀なくされました。

フランスは1949年、ベトナム国（バオ・ダイ政府）を樹立し、ベトミンと対抗しようとしました。しかし、中国で中華人民共和国が成立し、1950年には朝鮮戦争も始まったことで、アジアの冷戦が急激に進展し、ベトミンは中国からの軍事支援を受けることとなります。このような中、フランス国内では厭戦気分が広がり、戦争の続行が困難になっていきました。

1954年、ベトナム北西部のディエン・ビエン・フーでの戦闘を受け、和平会談の開催が急務となりました。

和平会談の開催

1954年4月26日、ジュネーヴにおいて関係各国が集まり、インドシナ和平会談が始まりました。参加国はフランス、アメリカ合衆国、イギリス、ベトナム国、カンボジア、ラオス王国、ベトナム民主共和国（ベトミン）、ソビエト連邦、中華人民共和国です。また、韓国と北朝鮮の代表も一同に参加し、朝鮮半島問題も議題に上がるものの、その場においては新しい進展は得られませんでした。

インドシナ和平交渉は難航を極めましたが、5月にはディエンビエンフーの戦いでフランスが壊滅的な敗北を喫しました。その後、フランス首相のピエール・マンデス＝フランスが和平実現を約束することで、交渉が進展しました。会談の最終日時点で、ベトミン側もソ連と中国の圧力により妥協し、7月21日、和平協定が署名される運びとなりました。

協定内容

この協定によると、インドシナの諸国—つまりベトナム、カンボジア、ラオスの独立が確認され、停戦が実施され、停戦監視団も派遣されることになりました。また、ベトミン軍は南ベトナムから撤退し、フランス軍は北ベトナム、カンボジア、ラオスからも撤退する仕組みとなっていました。そして、ベトナムは17度線で南北に分割され、1956年7月には自由選挙を行うことで統一を目指すことが決定されました。しかし、協定に署名したのはベトナム民主共和国、中華人民共和国、ソ連、フランス、イギリスの代表のみで、アメリカとベトナム国は名を連ねませんでした。

停戦後の展開

停戦後、フランスはインドシナから撤退しました。その結果、北ベトナムから約200万人が南へ移動し、南ベトナムではバオ・ダイが政権を失い、代わってゴ・ディン・ジエムがベトナム共和国を樹立します。北ベトナムと自由選挙について協議が行われなかったため、約束された南北統一選挙は実施されず、その結果、南北間の緊張が高まり、北ベトナムはゲリラ活動を展開。これに対しアメリカは軍事介入し、ベトナム戦争へと発展していくことになります。このように、ジュネーヴ協定は終戦の幕を引くどころか、さらなる不安定な未来を呼び寄せる結果となりました。

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