パルミラ攻防戦

パルミラ攻防戦について

パルミラ攻防戦は、シリア内戦の間、特に2015年から2017年にかけて、パルミラにおいてシリア政府軍とイスラム国家（IS）との間で繰り広げられた戦闘のことを指します。パルミラはホムス県に位置し、古代都市タドモルとして知られる場所で、世界文化遺産でもあるパルミラ遺跡が存在します。この遺跡は、古代ローマ時代に栄え、多くの歴史的価値を持っていますが、戦闘によって次第にその姿を失っていきました。

パルミラの歴史的背景

パルミラはかつてローマ帝国の重要な交易路の一部であり、個性的な文化を育んできました。ソロモン王の時代に建設されたとも伝えられ、セレウコス朝の時代には更なる発展を遂げました。しかし、その後のローマによる征服や、中世の禍によって衰退を余儀なくされ、長い間廃れていました。当地の遺跡は、2011年以降のシリア内戦の影響を受け、多くの支配者が入れ替わる中で再び注目されることとなりました。

内戦の影響

内戦が激化するにつれ、2015年にISがパルミラを攻撃し、最初の制圧を果たします。ISの攻撃は5月12日に始まり、政府軍は急速に劣勢に立たされ、パルミラ市はISの完全な支配下に置かれました。この間、ISは多くの民間人を「政権の協力者」とみなして虐殺し、特にパルミラ遺跡が抱える文化財に対する脅威は大きくなりました。ユネスコもこの状況を憂慮し、国際的な行動を求める声明を発表しました。

ISの支配と文化財の破壊

ISはパルミラを攻撃した後、遺跡内部や博物館に対し文化財の破壊を進めました。特に、古代の神殿や劇場が次々と攻撃され、その惨状は世界中に衝撃を与えました。遺跡の保存に努めていた地元の専門家や研究者も、多くが命を落としました。ISはこの地を「神の意志」として積極的に破壊活動を行い、文化的な抹殺を目指しました。

政府軍の攻勢と奪還

2016年、シリア政府軍はISの支配を奪還しようと攻撃を強化しました。ロシアの支援を受けて、3月には再びパルミラを取り戻すことに成功しました。この間、数回にわたる戦闘を経て、IS戦闘員はパルミラから撤退し、その後、遺跡の地雷や爆弾の撤去作業が行われました。さらには、パルミラ遺跡でコンサートが開催されるなど、文化的復興の兆しも見られました。

再度のIS攻撃とその後

しかし、ISは2016年12月に再びパルミラへの攻撃を仕掛け、パルミラは再び彼らの手に落ちる結果となります。政府軍が他の地域の戦闘に専念していたことが影響を与え、ISはこの機会を逃さずに再占領を果たしました。この時期も、パルミラ遺跡に対する攻撃が続き、遺跡の構造はさらに損なわれていきました。

2017年の最終奪還

最終的に、2017年の初めには再びロシア航空宇宙軍の支援を受けた政府軍がパルミラを攻め落とし、完全に奪還しました。この成果は、シリア政府にとって文化的にも戦略的にも大きな意味を持つものでした。奪還後は、地域の治安回復とともに、文化財の修復に向けた取り組みも始まりました。

この戦闘は、シリア内戦における重要な出来事であり、歴史的な文化遺産が影響を受けた事例として歴史に刻まれることでしょう。

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