パルース (地形)

パルース地域：肥沃な大地と変貌する生態系

パルースは、アメリカ合衆国北西部に位置する広大な農業地帯です。ワシントン州南東部、アイダホ州北部、そして一部はオレゴン州北東部にまたがり、その肥沃な土壌は古くから農業を支えてきました。主要な農産物としては小麦や豆類が挙げられ、この地域はアメリカ国内でも有数のレンズ豆の生産地としても知られています。

歴史と発展

パルースという名称の由来は定かではありません。有力な説としては、先住民のパルース族の名称がフランス系カナダ人の毛皮交易業者によって、「ペルース（pelouse）」というフランス語の「草が生い茂る場所」を意味する言葉に転訛したというものです。19世紀後半、この地域は開拓入植地として急速に発展し、一時的にはワシントン州のピュージェット湾周辺よりも人口が多かった時代もありました。1890年代には、公有地供与制度によりアイダホ大学とワシントン州立大学が設立され、現在に至るまで両校は密接な関係を保っています。

地理的な特徴

パルース地域は、伝統的にスネーク川の北、クリアウォーター川の北に位置する肥沃な丘陵地帯と定義されています。しかし、広義にはワラワラ地方やカマス・プレーリー、コロンビア川台地中央のビッグベンド地域、その他の小規模な農業地帯も含まれることがあります。この地域の景観を特徴づけているのは、氷河期に形成された沈泥の小丘です。不規則なこぶと窪みが連なり、北東向きの斜面が急峻であることが多いです。黄土の層が厚く堆積しており、非常に肥沃な土壌を形成しています。平坦な土地は少なく、プレーリーの周辺には針葉樹林が広がっています。

農業の変遷

初期のパルースの農業は、人や馬の力に頼る労働集約的なものでした。しかし、1920年代にコンバインが導入され始め、機械化が進みました。初期の大型コンバインは馬を多数必要としたため、小型コンバインが開発されたことで、機械化が急速に進展しました。その後、トラクターが普及し、農業の効率化がさらに進みました。現在では、この地域はアメリカ国内でも有数のレンズ豆の生産地となっています。

環境への影響

かつてパルースは、ブルーバンチウィートグラスやアイダホフェスキューなどの多年生草本で覆われた広大なプレーリーでしたが、現在ではほとんどが農地に転換されています。元のプレーリーはわずか1％ほどしか残っておらず、生態系が深刻な危機に瀕しています。農業の拡大は、野生生物の減少や水質・水量の変化など、環境に様々な影響を与えています。

生物多様性の喪失

農業の拡大によって、かつて豊富だった鳥や小動物の数は激減しています。農地が広範囲にわたって広がったことで、かつて存在した柵や未耕作地が減少し、小川や湿地も多くが消失しました。水辺の生態系は特に大きな打撃を受けており、鳥の生息環境の悪化が進んでいます。

水資源への影響

農業は水循環にも影響を与えています。耕作地からの流出水量の増加や河川の侵食が進み、多くの永続的な水流が断続的になってしまいました。また、地下浸透水の減少は、流出水の水位を上昇させ、以前よりも早く水が枯れる原因となっています。これらの変化は、両生類や水生生物の生息環境にも悪影響を与えています。

生態系の変化

森林の密度が高くなり、潅木や樹木が以前開けた場所にも侵入してきています。また、火災の頻度が減ったことにより、森林の構造が変化し、生態系に複雑な影響を与えている可能性があります。また、家畜の放牧によって、スネーク川やクリアウォーター川の渓谷では、在来種の植物が外来種の雑草に置き換わるなど、生態系の変化もみられます。

都市の発展

パルース地域には、コルファックス、パルース、プルマン（以上ワシントン州）、そしてアイダホ州のモスコーという、互いに数マイルしか離れていない4つの主要な都市があります。これらの都市を中心に、10以上の小さな町が点在しており、ワラワラ地方のような単一の中心地を持つ地域とは異なり、分散型の都市構造となっています。地域全体としては、スポケーン市が鉄道や輸送の中心地として重要な役割を果たしています。パルース地域は、歴史的に農業の発展とともに変貌を遂げてきましたが、その過程で環境にも大きな変化をもたらしてきた地域と言えます。

環境保護の必要性

パルースの生態系は現在、深刻な危機に瀕しています。生物多様性の回復のためには、農業と環境保護の両立を模索する必要があります。農地の管理方法の見直しや、水資源の保全、失われた湿地の復元など、さまざまな対策が求められています。パルースは、肥沃な大地と美しい風景を持つ魅力的な場所ですが、その環境を未来に残していくための努力が不可欠です。

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