パレルモ天文台

パレルモ天文台：歴史と天文学の偉大な遺産

パレルモ天文台は、イタリアのシチリア島パレルモにある、ノルマンニ宮殿内に設置された歴史ある天文台です。イタリア国立天体物理学研究所の重要な研究施設の一つであり、太陽や恒星のコロナ、恒星の進化、超新星残骸など、天文学および天体物理学分野における数々の重要な研究プロジェクトを推進してきました。

設立と初期の輝き

1790年、両シチリア王国のフェルディナンド1世は、天体観測におけるパレルモの地理的優位性を重視し、副王フランチェスコ・ダクイーノら知識人の進言を受け、天文台を創設しました。当時、辺境の地で働くことに同意する専門家を見つけることは困難でしたが、最終的に、当時目立った業績を残していなかった数学者ジュゼッペ・ピアッツィが初代台長に就任しました。

ピアッツィは、最新鋭の観測機器を導入し、天文台をヨーロッパ最高水準に引き上げました。特に、イギリスの職人ジェシー・ラムスデンに依頼した、恒星の位置測定用の大型観測機器（パレルモサークル）は、彼の最大の功績の一つです。この装置のおかげで、1801年には、最初の小惑星ケレスを発見しました。この功績により、彼は金メダルを授与されることになりましたが、これを辞退し、代わりに資金でトラウトン赤道儀を購入し、2つ目のドームを建設しました。

変遷と新たな展開

1817年、ピアッツィはナポリのカポディモンテ天文台の立ち上げのためパレルモを離れ、台長の座をニコロ・カチャトーレに譲りました。カチャトーレの後、息子であるガエターノ・カッチャトーレが台長に就任しますが、政治的な理由で解任されました。その後、ドメニコ・ラゴーナが台長を務め、25cm口径のメルツ赤道儀を導入しました。

1865年には、副台長に任命されたピエトロ・タッキーニが、メルツ赤道儀を用いて太陽物理学の研究を始め、パレルモ天文台の名声を高めました。また、1871年にはイタリア分光学者協会の設立を主導し、翌年には初の天体物理学レビュー誌「Memorie」を定期刊行しました。

困難と再建

1879年にタッキーニがローマへ移ると、天文台は困難な時代を迎えました。政治的・軍事的な状況、そして政府からの資金不足により、1923年には大学の一機関に格下げされました。第二次世界大戦中には、唯一残った近代的な観測機器であった天頂望遠鏡も失われ、閉鎖寸前にまで追い込まれました。しかし、1950年代にはドームの屋根が改修され、1976年から1991年まで台長を務めたジュゼッペ・サルヴァトーレ・ヴァイアナにちなんで改名されました。

現在の活動と組織

現在、パレルモ天文台は、X線望遠鏡の科学機器開発・試験を行うXACT（X-ray Astronomy Calibration and Testing Facility）や、天体物理学の観測結果をモデルに当てはめるためのコンピュータセンターSCAN（System of Calculation for Numerical Astrophysics）などを擁しています。また、天文台には、多くの観測機器コレクションを収蔵するスペーコラ博物館も併設されています。

スペーコラ博物館

スペーコラ博物館は、ノルマンニ宮殿の最上階に位置し、18世紀から19世紀にかけて使用された望遠鏡、六分儀、気圧計、温度計などの貴重な機器を多数展示しています。特に、初期の観測に使用されたパレルモサークルとトラウトン赤道儀は、その歴史的な価値の高さから特に注目されています。また、当時の天文学者たちの肖像画も展示され、この天文台の歴史を物語っています。

歴代天文台長

パレルモ天文台は、以下のような著名な天文学者たちによって運営されてきました。

ジュゼッペ・ピアッツィ
ニコロ・カチャトーレ
ガエターノ・カチャトーレ
ドメニコ・ラゴーナ
ピエトロ・タッキーニ
アンニーバレ・リッコ
トミストークレ・ゾーナ
フィリポ・アンジェレッティ
コッラディーノ・ミネオ
フランチェスコ・ゼーガ
コッラディーノ・ミネオ
ルチアーノ・キアラ
サルヴァトーレ・レオーネ
ジュゼッペ・サルヴァトーレ・ヴァイアナ
サルヴァトーレ・セリオ
サルヴァトーレ・ショルティーノ
* ジュゼッピーナ・ミセラ

パレルモ天文台は、その長い歴史の中で、天文学の発展に重要な役割を果たしてきました。現在も、研究施設として、また歴史的遺産を伝える博物館として、その価値を輝かせ続けています。

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