パンアメリカンハイウェイ

パンアメリカンハイウェイ：南北アメリカ大陸を貫く大動脈

パンアメリカンハイウェイは、アラスカから南アメリカ大陸最南端のウシュアイアまでを繋ぐ、南北アメリカ大陸を縦断する広大な道路網です。単一の道路ではなく、既存の各国主要道路をネットワーク化したものと言えるでしょう。1923年の米州国際会議で整備構想が提唱され、アメリカ合衆国の支援の下、1940～50年代に整備が大きく進みました。

複雑なルートと未開拓区間

パンアメリカンハイウェイのルートは、国によって名称が異なり、必ずしも「パンアメリカンハイウェイ」と呼ばれていない箇所もあります。特にカナダとアメリカ合衆国においては、公式な定義がありません。そのため、資料によってルートや総延長距離、始点・終点が大きく異なっているのが現状です。

一般的に本線とされるルートは、アラスカ州フェアバンクスから始まり、北米大陸西岸・中西部、メキシコ、中米を経て、南米大陸西岸を南下し、チリでアンデス山脈を横断、アルゼンチンのブエノスアイレス、そしてウシュアイアに至ります。北極圏に近い地域から熱帯雨林、高地まで、多様な気候と生態系を経験する、世界でも類を見ないルートです。

途方もない距離と困難な状況

総延長距離は48,000kmともいわれていますが、未舗装区間や危険な区間も数多く存在します。全線の同一規格維持は不可能で、道路状況は地域や国によって大きく異なります。乾季通行のみの区間や、地震、台風、積雪による通行止めが頻発する区間も多く、特にアンデス山脈の高地やダリエン地峡周辺は過酷な環境です。加えて、ラテンアメリカ諸国の治安情勢も、通行を困難にする要因となっています。

主要ルートと分断地点

パンアメリカンハイウェイは大きく北ルートと南ルートに分けられます。

北ルート（アラスカ～パナマ）：アラスカ州フェアバンクスを起点に、カナダ、アメリカ合衆国西海岸（または中西部）、メキシコ、中米を通りパナマに至ります。フェアバンクス～カナダ・ブリティッシュコロンビア州ドーソンクリーク間は「アラスカハイウェイ」、メキシコ～パナマ間は「インターアメリカンハイウェイ」と呼ばれています。

このルートはパナマとコロンビアの国境であるダリエン地峡で約87kmにわたって分断されています。この地帯は生物多様性に富む熱帯雨林であり、先住民族の居住地でもあります。熱帯性疾患や麻薬密売などの問題もあり、道路建設は困難を極めています。

南ルート（コロンビア～アルゼンチン）：コロンビア北西部を起点に、コロンビア、エクアドル、ペルー、チリ、アルゼンチンを南下し、ウシュアイアに至ります。ペルーではナスカの地上絵の一部が道路建設によって破壊されています。

数多くの支線

本線以外にも、メキシコ、コロンビア・ベネズエラ間、アルゼンチン・ウルグアイ・ブラジル間、アルゼンチン・パラグアイ間、ブラジル・ペルー間、チリ国内など、多くの支線が整備されています。これらの支線は、主要都市を結び、周辺地域へのアクセスを向上させています。

パンアメリカンハイウェイ会議

パンアメリカンハイウェイの整備・維持管理のため、関係国による「パンアメリカンハイウェイ会議」が開催されてきました。会議開催都市は、ブエノスアイレス、ワシントン、キト、カラカス、メキシコシティなどです。

まとめ

パンアメリカンハイウェイは、壮大なスケールと未開拓の区間、多様な地理的条件、政治的・社会的問題を抱える複雑な道路網です。完全な接続には至っていませんが、南北アメリカ大陸の文化交流、経済発展に大きく貢献しています。今後も、その整備と維持管理が続けられ、より安全で便利な道路網となることが期待されます。

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