パンサー・ウェストウインズ

パンサー・ウェストウインズ：栄光と挫折の英国自動車メーカー

パンサー・ウェストウインズ社は、1972年にロバート・ジャンケルによって設立された、イギリスの自動車メーカーです。サリー州を拠点に、1970～80年代に独自の道を歩みました。同社は、1930年代のクラシックカーを思わせる美しいデザインのスポーツカーで知られており、多くの愛好家を魅了しました。

クラシックデザインと革新的な試み

パンサー・ウェストウインズ社の成功の鍵は、往年の名車からインスピレーションを得た、ノスタルジックでありながら洗練されたデザインにありました。ジャガーSS100を彷彿とさせるJ72、フェラーリを思わせるFFなど、同社の車両はどれも個性的で、高い完成度を誇っていました。さらに、同社は、ジャガーXJ12のエンジンを搭載したレーザーや、ブガッティ・ロワイヤルを彷彿とさせるデ・ビルなど、型破りなモデルも手掛けています。その中でも、トライアンフ・ドロマイトをベースとした小型高級車リオは、ジャガーXJ5.3よりも高価だったため、市場での成功は限定的でした。しかし、最も注目すべきは、6輪の高級スポーツカーである「6」でしょう。これは、F1カー・ティレルP34にインスパイアされた画期的な試みでした。

主力車種となったのは、ボクスホール製エンジンとFRPボディを採用したリマです。このモデルは、897台という同社最多の生産台数を記録し、パンサー・ウェストウインズの代表作として広く知られるようになりました。

経営難と韓国企業への買収

しかし、順風満帆だったパンサー・ウェストウインズ社の歩みは、第二次石油危機や、積極的な拡大戦略による経営悪化によって暗転します。1979年、同社は倒産し、韓国の実業家ヤング・キム氏に買収されます。キム氏は、エセックス州ハーローに新工場を建設し、車体を韓国製に変更。リマの後継モデルとしてカリスタを生産開始します。カリスタは、イギリス・フォード製のエンジンと韓国製のアルミニウム車体を採用し、リマの改良型として高い性能を誇りました。

現代的デザインへの挑戦と終焉

その後、パンサー・ウェストウインズ社は、現代的なデザインのミッドシップ2+2スポーツカーであるソロを開発します。しかし、資金難が経営を圧迫し、1989年には再び経営破綻。同年、韓国の双龍自動車に吸収合併されました。双龍自動車は、カリスタの生産を「双龍・カリスタ」として73台追加生産しました。これをもって、パンサー・ウェストウインズ社の歴史に幕を閉じました。

パンサー・ウェストウインズの遺産

短命に終わったものの、パンサー・ウェストウインズ社は、そのユニークなデザインと技術力によって、自動車史に名を刻みました。クラシックカーへのオマージュと、革新的な試みの両方を追求した同社の姿勢は、現在でも多くのコレクターや自動車愛好家から高く評価されています。彼らの残した車両は、英国自動車産業の一つの重要な側面を示す貴重な遺産です。

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