パンドラ (文芸誌)

講談社BOXマガジン『パンドラ』：短命に終わった意欲作

『パンドラ』は、講談社BOX編集部が2008年2月に創刊した、小説、漫画、批評、エッセイなどを掲載する雑誌です。2009年8月、Vol.4の刊行をもって休刊しました。わずか4号という短い期間でしたが、その内容は多様で、独自の試みが数多く見られました。

創刊の背景とコンセプト

『パンドラ』は、同レーベルの文芸誌『ファウスト』の成功を踏まえて創刊されました。しかし、『ファウスト』が編集者太田克史氏の個人誌だったのに対し、『パンドラ』は講談社BOX全体を盛り上げるプラットフォームとなることを目指しました。そのため、編集長は太田氏ではなく、北田ゆう子氏、野崎哲也氏と持ち回り制でした。

誌名は「パンドラの箱」と講談社BOXの「BOX」を掛け合わせたもので、10代から20代前半をターゲットに据えていました。当初のキャッチコピーは「思春期の自意識を生きるシンフォニー・マガジン」でしたが、Vol.3からはコンセプトが変更され、リニューアルされました。

内容：多様なジャンルの融合

『パンドラ』の内容は、小説、漫画、特集記事、批評、エッセイなどがバランスよく構成されていました。小説では、西尾維新氏を始め、多くの作家が作品を発表。特に、講談社BOX新人賞「流水大賞」の受賞作品を毎回掲載するなど、新人発掘にも力を入れていました。「下剋上ボックス」コーナーでは、さらに多くの新人作家やイラストレーターを紹介しました。

漫画では、『ファウスト』からの移籍組に加え、北田氏や野崎氏の担当作家が多く参加。よしもとよしとも氏による8年ぶりの新作も掲載されました。批評やエッセイでは、『ファウスト』の流れを汲むものに加え、太田氏に批判的な論調のライターも起用。多様な視点を取り入れていました。また、「空の境界」、「ひぐらしのなく頃に」、「うみねこのなく頃に」など、人気作品を特集するなど、話題作にも積極的に取り組んでいました。

装丁と刊行

Vol.1とVol.2は2分冊構成で、独特の特殊コーティングが施された表紙が特徴でした。Vol.3以降はリニューアルされ、表紙デザインや構成などが変更。袋とじページも廃止されました。刊行形態も、当初は年2回を予定していましたが、実際には分冊により年4回となりました。Vol.3以降はページ数を減らし、年4回刊行と謳っていました。

休刊の理由

Vol.4刊行後、『パンドラ』は休刊となりました。その主な理由は、太田克史氏が星海社を設立して独立したことによる作家陣の流出です。主力作家が離れたことで、レーベル全体の規模縮小を余儀なくされ、Vol.5は刊行されませんでした。

そして『BOX-AiR』へ

『パンドラ』の休刊後、講談社BOXは電子雑誌『BOX-AiR』を刊行しましたが、これも2015年に休刊しました。

まとめ

『パンドラ』は、短い期間ながらも、多様なジャンルの作品を掲載し、新人作家発掘にも積極的に取り組んだ意欲的な雑誌でした。しかし、その挑戦は惜しくも中途半端な形で終わりました。その歴史は、日本のサブカルチャー史において、特異な存在として記憶されています。

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