パーシテアー

パーシテアーについて

パーシテアー（古希: Πασιθέα, Pāsitheā）は、ギリシア神話で美と優雅を象徴する女神の一人であり、カリスたち（カリテス）の中でも特に知られています。彼女の名は「万物の女神」を意味し、その存在は優雅さや美しさの概念と深く結びついています。時には長母音を省略してパシテアとも表記されます。

家庭背景と結婚

パーシテアーは、女神ヘーラーの娘であり、夫は眠りの神ヒュプノスです。彼女の存在は、神話において特別な役割を果たし、特にトロイア戦争の逸話に関連しています。ホメーロスの『イーリアス』やスミュルナのコイントスによる『トロイア戦記』において、彼女は重要な名を冠するキャラクターとして登場します。

『イーリアス』の中で、ヘーラーはヒュプノスに助けを依頼してゼウスを眠らせ、その見返りに素敵なカリスであるパーシテアーと結婚することを約束します。この流れは、彼女がいかに影響力のある存在であったかを示しています。また、『トロイア戦記』によると、ヒュプノスがパーシテアーと結婚することで、ヘーラーの娘婿となり、家族関係も描かれています。

美の女神としての地位

パーシテアーは、ヘーシオドスによって挙げられるアグライアー、エウプロシュネー、タレイアの「三美神」には含まれませんが、彼女を含むもう一つの「三美神」のグループも考えられています。このグループでは、パーシテアー、カレー、エウプロシュネーの三人が美しさの象徴とされています。このような異なる視点は、彼女の位置づけが多様であることを示しており、神話における役割の豊かな層を反映しています。

また、ノンノスの『ディオニュソス譚』では、パーシテアーはディオニューソスとアプロディーテーの娘の一人とし、彼女、ペイトー、アグライアーという三柱で新たな美の女神のグループが構成されています。このことからも、彼女がどれほど広範に語られていたかが理解できます。

結論

ギリシア神話におけるパーシテアーは、美と優雅の象徴として重要な存在です。彼女は神々の間に複雑な家族関係を持ち、彼女を巡る物語は多様な視点から描かれています。各文献の中での彼女の役割を考察することは、古代ギリシアにおける美の概念や神々の関係性を深める手助けとなるでしょう。

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