パーチェム・イン・テリス

パーチェム・イン・テリス（地上の平和）

『パーチェム・イン・テリス』（ラテン語: Pacem in Terris）は、ローマ教皇ヨハネ23世によって1963年4月11日に発布された回勅です。ヨハネ23世にとっては最後の回勅となり、彼の死後2ヶ月後に発表されました。

この回勅は、カトリック信徒のみならず、「すべての善意の人びと」に向けて教皇が発した初の回勅として、その意義が深く認識されています。人間が個人として有する生存権、尊厳、自由、教育といった基本的な権利を列挙し、核兵器や軍拡競争を終わらせるための取り組みについて言及しました。

概要

ヨハネ23世は、当時の冷戦という時代背景を踏まえ、政治情勢に対して警鐘を鳴らしました。「平和の回勅」は、ベルリンの壁建設から2年後、キューバ危機から数ヶ月後というタイミングで発表され、そのメッセージは世界に大きな影響を与えました。教皇は、紛争は武力ではなく対話によって解決されるべきだと説き、キリスト教的な人間理解に基づき、人権を尊重することの重要性を強調しました。

「すべての人間は、生きる権利を持っている。肉体的に尊厳を保つ権利、人としてふさわしい形での成長を遂げるために必要な手段を有する権利を持っている…」という言葉は、回勅の核心をなす部分であり、人間の尊厳と権利を強く訴えています。

回勅は以下の4つの節に分かれています。

第1節: 個人と人類の関係について、人権と道徳的義務の問題を扱っています。
第2節: 人と国家との関係について述べ、集合的な権力について考察しています。
第3節: 国家間の平等の必要性と、個人が遵守すべき権利義務の規律に国家も従う必要性を説いています。
第4節: 国家間の関係を強化し、国家の集合が互いに助け合う関係を構築することの必要性を表明しています。また、非キリスト教徒や非カトリック教徒を政治的・社会的な側面で支援するようにカトリック信者に呼びかけています。

タイトル

回勅の題名「パーチェム・イン・テリス――地上の平和」は、回勅の冒頭部分の言葉（インキピット）に由来します。教皇の文書には、慣例的にこのような題名が付けられます。

パーチェム・イン・テリス賞

回勅を記念して、1964年に「パーチェム・イン・テリス賞」が設立されました。現在は「クアッド・シティズ・パーチェム・イン・テリス連盟」が授与を行っています。

日本語出版物

教皇ヨハネ23世『回章「パーチェム・イン・テリス」 : 地上の平和』岳野慶作 訳、中央出版社、1968年
教皇ヨハネ23世『回勅 パーチェム・イン・テリス――地上の平和』マイケル・シーゲル 訳、日本カトリック司教協議会社会司教委員会 監修、ペトロ文庫 ; 022、カトリック中央協議会、2013年7月、ISBN 978-4-87750-176-1

関連項目

パーチェム・イン・テリス賞
世界人権宣言
市民的及び政治的権利に関する国際規約
国際人権法
生存権
パーチェム・イン・テリス (ミヨー) - ダリウス・ミヨーが1963年に作曲した合唱交響曲。事実上ミヨー最後の交響曲。

外部リンク

英語版テキスト
オリジナルのラテン語版テキスト
"What we are for", TIME, 1963.
Pacem in Terris

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