パーティで女の子に話しかけるには

パーティで女の子に話しかけるには：小説と映画の世界

ニール・ゲイマンによるSF短編小説『パーティで女の子に話しかけるには』（原題: How to Talk to Girls at Parties）は、2006年に発表され、短編集『壊れやすいもの』に収録されました。1970年代のイギリス、ロンドン郊外を舞台に、内気な少年エンと彼の友人ヴィクが、奇妙なパーティで出会う異質な少女たちとの交流を描いた作品です。この小説は、ゲイマン自身の青春時代の経験を反映した半自伝的な要素を含んでいるとされています。2009年には日本語訳が出版され、ヒューゴー賞、ローカス賞にもノミネート・受賞するなど高い評価を得ました。さらに、小説を題材とした限定版ポスターも制作・販売され、その売り上げの一部はコミック弁護基金に寄付されました。

小説版あらすじ

物語は、1970年代のロンドン南部、クロイドンを舞台に展開します。主人公のエンとヴィクは、あるパーティに足を運びます。そこで彼らは、ステラという少女や、ウェインズウェイン、旅行者、トリオレットと名乗る不思議な少女たちと出会います。これらの少女たちは、エンやヴィクの理解を超えた存在であり、彼らの幻想を打ち砕くような異質な存在として描かれています。ウェインズウェインは、自身の身体的な特徴を「傷物」と表現し、奇妙な話を語ります。旅行者と名乗る少女は、他の惑星を旅した経験を語り、エンを魅了します。そして、トリオレットとの出会いは、エンに忘れがたい、しかし言葉で表現できない神秘的な体験をもたらします。パーティの終盤、ヴィクはステラの恐るべき一面を目撃し、ショックを受けます。エンはトリオレットから耳元で囁かれた詩を覚えているものの、それを口に出すことができないまま物語は幕を閉じます。

映画版：パンクとエイリアンが交差する青春

2017年には、ジョン・キャメロン・ミッチェル監督によって、小説を原作とした同名映画が制作されました。映画版は、原作の持つ不穏な雰囲気を残しつつ、パンク音楽とエイリアンという要素をより前面に押し出した作品となっています。1977年のクロイドンを舞台に、パンクロックに夢中な高校生エンと、異星から来た少女ザンを中心に物語が展開します。ザンは、エンにパンクについて教わる代わりに、自身の種族の秘密を明かします。彼女は「第4コロニー」と呼ばれる集団の一員であり、地球を離れるまでの48時間しかないのです。エンとザンは、地元のバンドのライブに出演するなど、短いながらも濃密な時間を過ごします。しかし、ザンの仲間であるPT（ペアレント・ティーチャー）の介入により、エンはザンの本当の正体、そして彼女たちの恐ろしい習慣を知ることとなります。エンはザンを救出しようとしますが、最終的にザンは仲間たちと共に地球を離れることになります。15年後、エンはザンとの出会いを描いた小説を出版し、そこで意外な事実を知るのです。

映画版キャスト

映画版では、エル・ファニングがザン役、アレックス・シャープがエン役を演じ、ニコール・キッドマン、ルース・ウィルソンなど豪華なキャストが脇を固めています。 アレックス・シャープは本作が映画初出演作となりました。

映画の制作と批評

映画はシー＝ソー・フィルムズによって制作され、ミッチェル監督自身が脚本にも参加しました。撮影はシェフィールドで行われ、1977年のイギリスのパンクシーンを再現しています。劇中音楽は、パンクバンドの楽曲だけでなく、オリジナル曲も使用されています。映画は、1977年に発生したサウザン・テレビジョン放送妨害事件や、同年に公開された『スター・ウォーズ』など、当時の社会情勢や文化との関連性も指摘されています。


映画は2017年カンヌ国際映画祭で初公開されましたが、批評家の反応は賛否両論でした。一部からは、原作の複雑さを過度に強調した結果、物語のまとまりが欠けていると指摘されました。しかし、一方で、パンク音楽とエイリアンの融合という斬新な設定、エル・ファニングやニコール・キッドマンら俳優陣の演技、そして時代考証の細やかさなどが評価される声もありました。日本での公開後も、セッションシーンに対する評価の分かれ目が賛否両論の大きな理由として挙げられています。映画賞としては、カンヌ国際映画祭のクィア・パルム長編映画部門などにノミネートされています。

まとめ

小説と映画、それぞれの表現方法で、独特の世界観を作り上げている『パーティで女の子に話しかけるには』。原作の持つ不穏さと神秘的な雰囲気、そして映画版のパンクとエイリアンの融合という大胆な試みは、見る者の心に深い印象を残します。小説と映画、どちらから楽しむにしても、忘れられない体験となることでしょう。

もう一度検索