ヒカゲスゲ

ヒカゲスゲ（Carex lanceolata Bott）

ヒカゲスゲは、単子葉植物カヤツリグサ科スゲ属に分類される植物の一種です。比較的乾燥した山野に生育し、日本ではごく普通に見られます。

特徴

ヒカゲスゲは、以下のような特徴を持っています。

株立ち性: 大きな株を形成し、匍匐茎は出しません。
越冬性: 冬には葉の大部分が枯れます。
葉: 幅1.5-2mmと細く、やや硬い。成長すると30cmを超え、立ち気味に伸びて先端が垂れます。
根元: 鞘が褐色の繊維に分解したものが密集します。
花期: 春早く、葉よりも先に花穂が出ます。
雄小穂: 穂の先端に細い棒状の雄小穂がつき、鱗片は褐色です。
雌小穂: 側小穂は雌性で、間隔を空けて数個が並びます。基部には軸がありますが、主軸から離れず立ち上がります。
苞: 鞘があり、先端の葉状部はほとんどありません。
雌花: 雌小穂には数個の雌花がやや間隔を空けてつきます。鱗片は褐色です。
果胞: 熟すと倒卵形になり、基部は幅広くなっています。先端は嘴状には尖らず、表面に細かい毛があります。
果実: 倒卵形で断面は三角。基部は狭まります。

分布

ヒカゲスゲは、北東アジア一帯に分布しています。日本では、北海道から九州、伊豆諸島などで見られます。

日陰に生えることが名前の由来ですが、実際には森林縁の日当たりの良い場所や、やや乾燥した岩場を好みます。森の奥深くではあまり見られません。

近似種

ヒカゲスゲに非常によく似た種として、ホソバヒカゲスゲ（Carex humilis Less. var. nana (H. Lev. et Vaniot) Ohwi）が知られています。ホソバヒカゲスゲは、葉の幅が0.5-1.5mmとさらに細く、花穂が短い点が特徴です。ヒカゲスゲの花が葉の上に伸び上がるのに対し、ホソバヒカゲスゲは新しい葉の陰に花が出ます。分布域はほぼ同じです。

近年、ヒカゲスゲの種内変異と考えられていたものから、独立した種として扱われるべきものがあるという検討が進められています。

分類

頂小穂が雄性、側小穂が雌性、苞に鞘があり、鱗片が褐色で果胞に毛があるといった特徴を持つものをまとめてヒカゲスゲ節とします。ヒメスゲ節やヒナスゲ節もこれに含める考え方もあります。

日本には、ヒカゲスゲ、ホソバヒカゲスゲの他に、限られた地域でのみ見られる種があります。

スゲ属 Carex

ヒカゲスゲ節 Sect. Digitatae
ヒカゲスゲ C. lanceolata Bott
ホソバヒカゲスゲ C. humilis Less. var. nana (H. Lev. et Vaniot) Ohwi
アズマスゲ C. lasiolepis Franch. var. lasiolepis
サヤマスゲ C. hashimotoi Ohwi
アカスゲ C. quadriflora* (Kuek.) Ohwi

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