ヒゲホオジロ

ヒゲホオジロ（Emberiza cia）

ヒゲホオジロは、鳥類の中でもスズメ目に属し、ホオジロ科に分類される種です。その名前は、顔の模様が人の「ヒゲ」のように見えることに由来しています。学名はEmberiza ciaとされています。

形態

成鳥の全長は約15センチメートルから16センチメートルほどで、ホオジロの仲間としては中程度の大きさです。外見上の最も顕著な特徴は、その頭部の複雑な模様です。頭部には、目の上に明瞭な白っぽい眉斑があり、その下には黒っぽい過眼線が通っています。さらに、頬から顎にかけて白い線があり、その下を黒い線が縁取るように走っています。この顎の部分の黒い線が、和名である「ヒゲ」ホオジロの由来となった特徴です。頭頂部から後頸にかけては灰色がかった色をしており、細い縦斑が入ることがあります。背中や翼の羽は褐色で、黒褐色の縦斑が目立ちます。尾羽は比較的長く、外側の羽に白い部分が見られます。体の下面は淡い黄褐色や灰色がかった白色をしており、胸や脇腹には淡い縦斑が現れることがあります。オスは頭部の模様がより鮮明で、コントラストがはっきりしている傾向がありますが、メスは全体的に色が淡く、模様の輪郭もやや不明瞭なことが多いです。嘴は円錐形で、ホオジロ科特有の頑丈な作りをしており、植物の種子を割るのに適しています。脚は短く、色は褐色を帯びています。

分布

ヒゲホオジロは、ユーラシア大陸の温帯域に広く分布しています。その生息域は非常に広範で、西は南ヨーロッパ、特に地中海沿岸の国々から始まり、東は中央アジア、ヒマラヤ山脈、そして中国の一部にまで及びます。地域によっていくつかの地理的変異が見られ、亜種として分類されることもあります。多くの生息地では一年を通して同じ場所に留まる留鳥ですが、分布域のより北部に位置する個体群や、標高の高い山地に生息する個体群は、冬季になると寒さを避けて比較的温暖な低地へと移動する渡りを行うことがあります。日本においては、ヒゲホオジロは本来の定期的な渡来ルート上にはなく、ごく稀に記録される迷鳥または非常に infrequent（不規則な）な冬鳥や旅鳥として観察される程度です。そのため、日本国内でヒゲホオジロを目撃することは非常に珍しい機会と言えます。

生態

ヒゲホオジロは主に、山地の斜面や丘陵地帯、岩場、開けた草地、低木林などが点在する比較的乾燥した環境を好んで生息します。果樹園や段々畑のような、人間活動の影響を受けた開けた場所にも適応しています。餌は主に地面を歩きながら探します。食性は年間を通して植物の種子が中心ですが、繁殖期には子育てに必要な栄養を補うため、昆虫類やクモなどの無脊椎動物も積極的に捕食します。特に冬期には、他のホオジロ類やフィンチ類と混群を形成し、農耕地などで落ちた種子などを探している姿が観察されることがあります。

繁殖

繁殖期は通常、春から夏にかけて訪れます。営巣場所は、低木の茂みの中や根元、岩の隙間や割れ目、あるいは土手のくぼみなど、地面に近い場所に巣を作ることが多いです。巣は、枯れた植物の茎や葉、細い根などを材料として、お椀状に丁寧に編まれます。巣の内側には、細かい草の繊維や動物の毛、羽毛などが敷かれ、雛にとって快適な空間が用意されます。一度の繁殖で産む卵の数は、一般的に3個から5個です。卵の色は、白色や淡い青緑色を基調とし、その上に茶色や黒っぽい斑点や線状の模様が入っています。抱卵期間は約11日から14日間で、主にメスが抱卵を行いますが、オスが短時間抱卵を手伝うこともあります。雛は孵化後、およそ10日から13日で巣立ちを迎えます。多くの場合、年に1回または2回の繁殖を行います。

鳴き声

さえずりは、比較的ゆっくりとしたテンポで、いくつかの異なる節を組み合わせて鳴かれます。「チッチッチッ、フィー、チューイ、チューイ」といったように聞こえることがありますが、個体や生息地域によってさえずりのパターンには variations（変化）があります。オスは、岩の上や低木のてっぺんなど、周囲を見渡せる場所でさえずり、縄張りを主張したりメスを惹きつけたりします。地鳴きとしては、「チッ」や「ツィッ」といった短い声を発します。また、飛び立つ際には「プシー」という独特の声を聞くことができます。警戒している時には、より強く鋭い声で鳴くこともあります。

ヒゲホオジロは、その特徴的な頭部の模様から、識別しやすいホオジロとして知られており、バードウォッチャーの間でも人気があります。広範囲に分布していますが、それぞれの地域の環境に適応した興味深い生態を持っています。

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