ヒタチエクスプレス硬式野球部

愛知県小牧市を活動拠点としていた社会人野球の企業チーム。倉庫運輸業を営むヒタチエクスプレスを運営母体とし、わずか数年という短期間ながら日本野球連盟に加盟し活動しました。なお、茨城県日立市に本拠を置く日立製作所硬式野球部とは直接的な関連はありませんでした。

このチームは、運営母体であるヒタチエクスプレスの社内活性化を目的として、2006年秋にその発足が発表されました。当時、東海地区は社会人野球の強豪企業チームがひしめき合う、全国でも有数の激戦区でした。こうした状況を考慮し、当初は愛知県野球連盟や東海地区野球連盟から、より緩やかな活動形態であるクラブチームとしての登録が推奨されました。しかし、チーム関係者の社会人野球に対する熱意は非常に強く、その熱意が実を結び、最終的には東海地区において実に13年ぶりとなる新規企業登録チームとして、2007年3月9日付けで日本野球連盟への加盟が正式に公示されました。

チーム編成は、他の社会人野球チームからの移籍経験を持つ選手たちと、厳しいセレクションを勝ち抜いた新卒選手を中心に構成されました。多くの新戦力を擁して臨んだ初めての公式戦は、社会人野球最大のトーナメントである都市対抗野球大会へ繋がる第78回大会の愛知県・三重県1次予選でした。この予選において、ヒタチエクスプレス硬式野球部は、その創設間もないチームながらも、クラブチーム相手に圧倒的な実力差を見せつけ連勝。見事1次予選を1位で通過し、東海地区二次予選へと駒を進めるという鮮烈なデビューを飾りました。この短期間での予選突破は、関係者やファンに大きな衝撃を与え、今後の飛躍が最も期待されるチームの一つとして注目を集めました。

しかし、その前途洋々と思われた活動は、運営母体の経営状況の悪化という予期せぬ事態により、突如として幕を閉じることになります。2008年10月31日付で、運営母体であるヒタチエクスプレスが事業を停止し、自己破産申請の手続きに入ったのです。これを受け、東海地区野球連盟は11月5日、チームが11月6日付で解散することを発表しました。日本野球連盟も11月19日付けで正式に解散を公示しました。設立からわずか約2年という、あまりにも短い活動期間でした。

チームの沿革は以下の通りです。

- 2006年: チーム設立に向けたセレクションを実施し、チーム体制を構築。
- 2007年: 「ヒタチエクスプレス」として日本野球連盟に企業チームとして登録。公式戦に初参加し、都市対抗野球大会東海地区二次予選に進出。
- 2008年: 運営母体の事業停止・自己破産に伴い、チーム解散。

短い活動期間ながら、このチームからプロ野球界へ選手を輩出しています。内野手の大原淳也選手は、チームの廃部後、クラブチームのアークバリアドリームクラブを経て、四国・九州アイランドリーグの香川オリーブガイナーズでプレー。その後、2010年のNPBドラフト会議で横浜ベイスターズから7位指名を受け入団しました。また、元プロ野球選手（大阪近鉄バファローズ、東北楽天ゴールデンイーグルス）の佐藤和宏氏が、選手として競技者登録していた時期もありましたが、退団しています。

期待されながらも、運営母体の経営破綻という形で無念の解散となったヒタチエクスプレス硬式野球部。その短い歴史は、社会人野球における企業チームの脆さをも示唆する出来事でした。しかし、短期間で強豪ひしめく東海地区予選を勝ち進んだ実績は、チームの実力を確かに物語っており、関係者の情熱と選手の懸命なプレーは、確かに社会人野球史の一頁に刻まれています。

もう一度検索