ヒトコロナウイルス

ヒトコロナウイルス：風邪からパンデミックまで

ヒトコロナウイルス（Human coronavirus, HCoV）は、ヒトに感染するコロナウイルスを総称する名称です。かつてはヒト呼吸器ウイルスとも呼ばれていましたが、現在は、風邪の原因となるウイルスから、重篤な呼吸器疾患を引き起こすウイルスまで、複数のウイルス種を含む広い概念として用いられています。

ヒトコロナウイルスの種類と分類

ヒトに感染するコロナウイルスは、大きく分けて以下の7種類が知られています(2020年3月時点)。これらはアルファコロナウイルス属とベータコロナウイルス属に分類されます。

アルファコロナウイルス属:
ヒトコロナウイルス229E (HCoV-229E): 風邪の一般的な原因ウイルスです。1960年代に発見されました。
ヒトコロナウイルスNL63 (HCoV-NL63): 同じく風邪の原因ウイルスであり、2000年代初頭に発見されました。
ベータコロナウイルス属:
ヒトコロナウイルスOC43 (HCoV-OC43): 風邪の一般的な原因ウイルスで、1960年代に発見されました。
ヒトコロナウイルスHKU1 (HCoV-HKU1): 風邪の原因ウイルスで、2000年代初頭に発見されました。
[SARSコロナウイルス]] (SARS-CoV): 2002～2004年に流行した重症急性呼吸器症候群]の原因[[ウイルスです。コウモリが自然宿主と考えられています。
MERSコロナウイルス (MERS-CoV): 2012年から流行している中東呼吸器症候群(MERS)の原因ウイルスで、ラクダを介してヒトに感染します。
* SARSコロナウイルス2 (SARS-CoV-2): 2019年末から世界的に大流行した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスです。

これらの中で、狭義のヒトコロナウイルスとしては、HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-OC43、HCoV-HKU1の4種類が挙げられます。 また、過去に発見されたものの、サンプルが失われ分類が不明なヒトコロナウイルスB814も存在しました。

ヒトコロナウイルス感染症

ヒトコロナウイルス感染症は、感染するウイルス種によって症状が大きく異なります。

風邪症候群

HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1は、一般的な風邪の原因となります。初期症状は微熱、頭痛、耳痛などであり、その後高熱を伴う場合があります。風邪全体の10～15%、流行時には35%の原因とされています。これらのウイルスは世界中に広く分布しており、年間を通して感染が見られます。潜伏期間はウイルスによって異なり、HCoV-229Eでは10～14日、他のウイルスでは3日程度です。

SARS(重症急性呼吸器症候群)

SARS-CoVによって引き起こされるSARSは、2002～2004年に世界的に流行しました。中国南部が起源とされ、世界30ヶ国で8,422人が感染、916人が死亡しました(致死率約11%)。コウモリが自然宿主であると考えられており、潜伏期間は2～10日です。

MERS(中東呼吸器症候群)

MERS-CoVによって引き起こされるMERSは、2012年から現在も散発的に発生しています。ラクダを感染源としてヒトに感染し、重症肺炎を引き起こします。ヒトからヒトへの感染も確認されており、致死率は高いです。潜伏期間は2～14日です。

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)

SARS-CoV-2によって引き起こされるCOVID-19は、2019年末から世界的に大流行しました。高い感染力と、重症化のリスクを持つことから、世界的なパンデミックを引き起こしました。潜伏期間は、数日から14日程度です。SARS-CoVとの類似性があるものの、人の細胞への結合能力はSARS-CoV-2の方がはるかに高いことが明らかになっています。

まとめ

ヒトコロナウイルスは、軽症の風邪から重篤な肺炎まで、幅広い疾患を引き起こすウイルス群です。それぞれのウイルスや感染症の特徴を理解し、適切な予防策と対応をすることが重要です。 今後も新たなコロナウイルスの出現や、既存ウイルスの変異への警戒が必要です。

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