ヒトモトススキ属

ヒトモトススキ属 (Cladium) について

ヒトモトススキ属は、カヤツリグサ科に分類される植物の属の一つです。日本では、ヒトモトススキ (Cladium chinense) のみがこの属に含まれています。この植物は、その独特な形態と生態から、他の植物とは容易に区別できます。

特徴

ヒトモトススキ属の植物は、大柄でがっしりとした多年草であり、しばしば匍匐茎を伸ばして成長します。桿（花茎）は断面がやや三角形状をしており、その基部からは多数の葉が生え出します。これらの葉は細長く、三列に配置されており、縁には強いざらつきがあります。また、桿の節からも葉が出ることが特徴です。

花序は複円錐花序を形成し、個々の花序は散房状に配置されます。各花序には多数の小穂がつきます。小穂は2つ以上の少数からなる両性花を含み、それぞれの小花は鱗片に包まれて密な小穂となります。鱗片は螺旋状に配置されています。

小花には花被やその派生物がなく、雄しべと雌しべのみで構成されています。雄しべは通常2つ、時に3つあります。雌しべの柱頭は3つに裂け、花柱の基部は幅広くなって雌しべの先端と連続しています。この花柱基部の特徴的な部分は、果実の成熟時にも残ります。

果実はやや扁平な三稜形の断面を持ち、表面はコルク状に変化して核果のような状態になります。

他の属との区別

果実と雌しべの基部が幅広く接続する点は、シンジュガヤ属の植物にも見られますが、シンジュガヤ属は雌雄異花である点で区別されます。また、花や小穂の構造はミカヅキグサ属に似ていますが、ミカヅキグサ属の小花には花被に由来する刺毛が存在します。果実が核果状になる点も、ヒトモトススキ属の大きな特徴の一つです。

アンペライ属も、果実が核果状になる点で共通しますが、アンペライ属の葉は円筒形または扁平な単面葉であり、二列性である点で異なります。さらに、花柱の基部の形状も異なります。

分布

ヒトモトススキ属の植物は、世界の熱帯地域を中心に、一部は暖帯にも分布しており、約5種が知られています。日本では、本州南部までヒトモトススキのみが分布しています。

利用

ヒトモトススキ属の植物は、直接的に実用的な用途は報告されていません。

代表種

C. chinense (ヒトモトススキ): 日本に分布する唯一の種。

参考文献

佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他『日本の野生植物　草本I 単子葉植物』(1982年、平凡社)　p.169
* 初島住彦『琉球植物誌（追加・訂正版）』,(1975),沖縄生物教育研究会　p.726

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