ヒドロキシジン

ヒドロキシジン（Hydroxyzine）

ヒドロキシジンは第一世代の抗ヒスタミン薬であり、その構造にはジフェニルメタンとピペラジンが含まれています。1953年に初めて発見され、1956年には商品名「アタラックス」または「アタラックス-P」として発売されました。日本での承認は1957年（昭和32年）に得られています。

この薬剤は中枢神経系に対して抑制的な効果を持ち、不安や緊張、抑うつの軽減に役立つ強い抗不安作用を特徴としています。さらに、ヒドロキシジンは抗ヒスタミン作用を持つため、皮膚の痒みや乗り物酔いによる嘔気の緩和にも用いられます。著名な特性として鎮静、催眠、抗不安効果があり、治療域内では薬物乱用や依存症のリスクが低いとされています。オピオイドの副作用を軽減し、オピオイドによる痛み緩和効果を増強する場面でも使用されます。

剤形と類薬

ヒドロキシジンはさまざまな剤形で利用可能で、主要には錠剤、注射剤、カプセル、シロップ、散剤があります。注射剤と錠剤は塩酸塩として提供され、その他の剤形はパモ酸塩型です。ヒドロキシジンの近縁薬としては、シクリジンやバクリジン、メクリジンが挙げられ、これらは効能や使用方法が似ています。加えて、セチリジンはヒドロキシジンの代謝産物ですが、抗不安効果は弱いものの同様の抗ヒスタミン作用を示します。

効能・効果

日本においてヒドロキシジンは複数の効能が承認されています。具体的には、蕁麻疹や皮膚疾患に伴う痒み、神経症における不安・緊張・抑うつ、麻酔前の投薬、術前・術後の悪心や嘔吐の予防などが含まれます。特に精神的な安定を求める患者に対して広く用いられる薬剤で、歯科や産科医療においてもその重要性が認められています。研究によれば、肝臓や神経系への副作用の発現は少なく、安全性が確認されています。

禁忌と副作用

ヒドロキシジンは一部の患者に対して禁忌とされており、過敏症の既往がある患者や妊婦、そしてポルフィリン症の患者には使用が避けられるべきです。また、長期投与では遅延性ジスキネジアが発現する可能性が指摘されており、特に高齢者においては注意が必要です。一般的な副作用には眠気や口渇があり、少数の症例では重大な反応が見られることもあります。自動車運転など、危険が伴う行動には十分な配慮が求められます。

作用機序と薬物動態

ヒドロキシジンはヒスタミンH1受容体に対して逆作動的に作用し、抗コリン作用は低いことが特徴です。さらに、5-HT2AやD2受容体にも拮抗作用を持つことで、抗不安効果に寄与しています。投与後は迅速に全身に分布し、効果は通常1時間以内に現れますが、高齢者や肝機能障害がある患者では半減期が延長するため、注意が必要です。

総括

ヒドロキシジンは多面的な作用を持つ薬剤であり、不安症の治療やアレルギー症状の軽減において特に有用です。安全性が高く、使用上の注意点はありますが、適切に使用すれば多くの患者にとって効果的な治療選択肢となります。

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