ヒノキシダ

ヒノキシダの特徴

ヒノキシダ（Asplenium prolongatum）は、チャセンシダ科チャセンシダ属に分類される常緑性のシダ植物です。深山の湿った場所に自生し、その繊細で美しい葉が特徴です。名前の由来は、葉の形状がヒノキの葉に似ていることに因んでいます。

形態

茎: 短く直立し、多数の葉を密集してつけます。
葉: 斜め上に伸び、先端は下向きに垂れ下がります。葉柄、羽片、裂片はほぼ同じ質感の滑らかな緑色で、まるでビニール製の造花のような印象を与えます。
葉柄: 長さ5～10cmで、基部には鱗片がありますが、すぐに脱落します。
葉身: 長さ10～20cmで、全体の形は長楕円形から披針形をしています。二回羽状複葉に分かれ、羽片はさらに羽状に分裂します。上側の裂片は下側よりも多く、線形で幅約1.5mmです。羽片の間は裂片の幅以上に開いています。
胞子のう群: 裂片の裏側に線形で長さ2～5mmの胞子のう群が一つずつ付いています。

生育の特徴

葉の先端は棒状に少し突き出し、地表に接するとそこから根と芽を出し、新たな株を形成します。この過程を繰り返し、密な群落を作るのが特徴です。

分布

ヒノキシダは、本州では伊豆半島や紀伊半島、四国南部、九州に分布しています。国外では、朝鮮半島、台湾、中国、ベトナム、インド、スリランカなど、アジアの温暖な地域に広く分布しています。

近似種との識別

ヒノキシダは、その独特な形状と、地表を這うように成長する姿から、比較的容易に見分けることができます。最もよく似ているのはコウザキシダ（A. ritoense）です。葉の裂け方や質感が似ていますが、コウザキシダは葉全体の形が楕円形に近く、幅広であること、また葉先から芽を出さない点で区別できます。コウザキシダは岩壁などに着生し、葉を垂れ下げて生育することが多いです。

アオガネシダ（A. wolfordii）やオオバヒノキシダ（A. trigonopterum）もやや似ていますが、これらの種は小羽片がやや幅広く、胞子のう群が複数つくことで見分けることができます。これらの近似種は本州南岸以南に生育しています。他にも近縁種は多数ありますが、形態的にやや異なります。

参考文献

岩槻邦男(1992)『日本の野生植物　シダ』 平凡社

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