ヒヤシンス

ヒヤシンス（風信子、飛信子）

ヒヤシンス（学名: Hyacinthus orientalis）は、キジカクシ科ツルボ亜科に属する球根性の多年草です。一般的にはヒアシンスとも呼ばれ、秋植え球根として親しまれています。鉢植えや水栽培で観賞されることが多く、その美しい花と甘い香りが魅力です。

形態・生態

ヒヤシンスは春先に芳香を放つ花を咲かせます。原種の花色は青紫色ですが、園芸品種は豊富で、赤、ピンク、白、黄、紫など、さまざまな色彩が存在します。生育に適した温度は20℃前後で、冷涼な気候を好む性質があります。

分布

ヒヤシンスは、地中海東部沿岸地域（トルコ、シリア、レバノン、イスラエル）からイラン、トルクメニスタンにかけての地域が原産です。

人間との関わり

ヒヤシンスはオスマン帝国で栽培が始まり、園芸植物として発展しました。16世紀にはヨーロッパに伝わり、特にイギリスでフローリスト（園芸愛好家）たちの間で人気を博し、18世紀から19世紀にかけて盛んに品種改良が行われました。しかし、イギリス系のヒヤシンスは20世紀初頭に衰退し、現在ではほとんど残っていません。

現在、一般的に栽培されているのは、地中海北東部原産のダッチヒヤシンスで、18世紀から主にオランダで改良が進められ、2,000を超える栽培品種が作出されました。ダッチヒヤシンスは、一本の茎に青、赤、白、淡黄色など、多様な色の花を多数咲かせます。また、ローマンヒヤシンス（H. o. var. albulus）と呼ばれる変種もあり、耐寒性はあまり強くなく、やや小ぶりな青や白の花を咲かせます。

ヒヤシンスの名前は、ギリシャ神話に登場する美少年ヒュアキントスに由来します。ヒュアキントスは、医学の神アポロンに愛されていましたが、西風の神ゼピュロスの嫉妬により、円盤投げの事故で命を落とします。ヒヤシンスは、ヒュアキントスの血から生まれたと伝えられています。この神話にちなみ、ヒヤシンスの花言葉は「悲しみを超えた愛」とされています。

日本には、1863年（文久3年）にフランスから種子や球根が伝わりました。当時、チューリップやスイセンなどと共に、その珍しさから注目を集めました。

ヒヤシンス属

ヒヤシンス属（Hyacinthus）は、キジカクシ科に属する植物のグループで、3種が含まれます。ただし、H. litwinowii と H. transcaspicus を別属の Hyacinthella に分類し、Hyacinthus 属を1種のみとする説もあります。

Hyacinthus litwinowii
ヒヤシンス Hyacinthus orientalis
Hyacinthus transcaspicus*

ヒヤシンスは、その美しい花姿と芳醇な香りから、春のガーデニングに欠かせない存在として、世界中で愛されています。また、水耕栽培でも手軽に楽しめるため、室内での鑑賞にも適しています。

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