ヒュンダイ・i20 WRC

ヒュンダイi20 WRC：WRCの歴史に名を刻んだマシン

現代自動車が世界ラリー選手権（WRC）への参戦を目的に開発した、競技専用車ヒュンダイi20 WRC。韓国での設計、ドイツでの開発という体制で、2014年のWRC再参戦を目指して誕生しました。ベース車両はヒュンダイi20で、アクセントWRC以来となる現代自動車のWRカーでした。

開発：技術の粋を集めた挑戦

開発初期のテクニカルディレクターにはベルトラン・バラが就任、その後ニノ・フリソンが引き継ぎました。テストドライバーにはユホ・ハンニネン、ブライアン・ブフィエ、クリス・アトキンソンらが名を連ね、エースドライバーのティエリー・ヌービルも、前所属チームとの契約交渉を経て、チームに加わりました。

開発においては、全長とホイールベースが他のWRカーに比べて長いことが特徴です。エクステリアは、大きく張り出したオーバーフェンダーと2段式のリアウイングが目を引くデザイン。エンジンはピポ・モチュール社がチューニングした1.6L直列4気筒ターボGDi、サスペンションはREIGER製のマクファーソンストラット、駆動方式はフルタイム4WDで機械式LSDを採用するなど、高い性能を実現しています。タイヤはミシュランが供給しました。

戦績：栄光の軌跡と惜敗

2012年7月、パリモーターショーで初公開されたi20 WRCは、2014年1月のモンテカルロラリーでWRCデビューを果たしました。デビュー戦ではトラブルに見舞われましたが、メキシコラリーでヌービルが3位入賞を果たし、初表彰台を獲得。続くドイツラリーでは、ヌービルが優勝、ソルドが2位とチーム初1-2フィニッシュを達成しました。この優勝は、そのシーズンのフォルクスワーゲン勢以外による唯一の勝利となりました。

2015年シーズンは、新型モデルの開発と並行して改良が続けられ、スウェーデンラリーではヌービルがセバスチャン・オジェと接戦を繰り広げ2位を獲得。マニュファクチャラーズランキングでは3位に終わりましたが、着実にポイントを獲得し続けました。

2016年シーズンには、他チームが2017年導入の新規定マシン開発に注力する中、現代自動車は5ドアの新型i20を投入しました。当初は3ドアクーペを投入予定でしたが、FIAの規定変更により計画変更を余儀なくされたのです。この5ドアモデルは開発期間の短縮に伴う制約がありながらも、2017年規定マシンの開発に役立つデータを得ることができました。この年、ヌービルがサルディニア、ヘイデン・パッドンがアルゼンチンで優勝し、マニュファクチャラーズランキングは2位でシーズンを終えました。

そして未来へ：レガシーとその後

2016年シーズンを最後に、このi20 WRCはWRC公式戦から姿を消しました。しかし、その戦闘能力は高く評価されており、その後はプライベーターへ供給され、世界中のラリーシーンで活躍を続けました。また、マーカス・グロンホルムがWRX参戦用マシンに改造して使用しているという事例もあり、その遺伝子は現在も受け継がれています。ヒュンダイi20 WRCは、現代自動車のWRC挑戦の歴史において、重要な役割を果たした一台と言えるでしょう。

まとめ：挑戦と進化の物語

ヒュンダイi20 WRCは、現代自動車のWRCへの情熱と挑戦を象徴するマシンです。開発段階での困難や、WRCでの激闘、そしてその後の展開まで、数々のドラマを生み出しました。その高い性能と、WRCの歴史に刻まれた功績は、これからも語り継がれていくことでしょう。

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