マーカス・グロンホルム

マーカス・グロンホルム：WRCを彩ったフィンランドの英雄

マーカス・ウルフ・ヨハン・グロンホルム。1968年2月5日、フィンランドのインクーに生まれた彼は、ラリー界のレジェンドとして知られています。WRC（世界ラリー選手権）で2度のワールドチャンピオンに輝き、通算30勝を記録。これはWRC歴代3位という偉大な功績です。

困難な道のりからの出発

グロンホルムの父もラリードライバーであり、フィンランド・ラリー選手権で2度のチャンピオンに輝いていました。しかし、マーカスが13歳の時、父親はテスト走行中の事故で亡くなります。この悲劇的な出来事は、彼の人生に大きな影を落とすと同時に、ラリーへの情熱を燃やすきっかけにもなりました。

当初はモトクロス選手として活動していたグロンホルムですが、怪我をきっかけにラリーに転向。1987年からキャリアをスタートさせます。国内選手権で経験を積み、1990年にはトヨタのワークスドライバーとして1000湖ラリーに出場。これがトヨタとの長く深い関係の始まりとなりました。

その後も、トヨタや三菱、セアトなどのチームでWRCにスポット参戦。しかし、プライベートチームでの活動が中心だったため、十分なテストや経験を積むことができず、コリン・マクレー、カルロス・サインツ、トミ・マキネンといった同世代のライバルたちと比較すると、苦戦を強いられる時期が続きました。それでも、フィンランド国内選手権では圧倒的な強さを発揮し、1994年、1996年、1997年、1998年の4回チャンピオンを獲得しています。

プジョー時代：WRC王座への階段

1998年、ラリー・フィンランドでクラッシュしたグロンホルムは、一度ラリーから離れることを真剣に考え始めます。しかし、そんな彼に転機が訪れます。WRC復帰を目指していたプジョー・チームのマネージャー、ジャン＝ピエール・ニコラから声がかかったのです。

プジョーワークスドライバーとなったグロンホルムは、2000年にWRC初優勝を飾ります。その勢いのままシーズン4勝を挙げ、念願のWRC年間王者に輝きました。翌2001年は思うような結果が出ませんでしたが、2002年には5勝を挙げて再びチャンピオンの座を手にします。この年には、レース・オブ・チャンピオンズでも優勝するなど、絶頂期を迎えていました。

しかし、2003年以降は、ペター・ソルベルグやセバスチャン・ローブといった若手ドライバーの台頭や、プジョーの新型マシンの不調などもあり、チャンピオン獲得は叶いませんでした。

フォード時代：熾烈なタイトル争い

プジョーがWRCから撤退したため、グロンホルムは2006年からフォードに移籍します。フォードでは開幕2連勝を飾るなど、好調なスタートを切りましたが、ライバルであるローブとの激しい争いを繰り広げました。2006年、2007年と、ローブとの差はわずか1ポイント、4ポイントという接戦を演じ、2位という結果に終わりました。2007年シーズンをもって現役を引退します。

引退後

引退後は、ショッピングセンター経営や後進の育成に尽力する一方で、ラリークロスにも挑戦。さらにはWRCへのスポット参戦やパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムにも出場するなど、精力的に活動しました。息子のニクラスもラリークロス選手として活躍しており、グロンホルムは息子のマネージャーやチームオーナーとしてサポートしています。

寡黙な天才

グロンホルムは、やや口数の少ない人物として知られています。しかし、その心中は表情や言葉に現れやすく、時に感情的な一面も見せていました。193cmの長身も特徴的で、WRCでは最も身長の高いドライバーでした。「Bosse」という愛称で親しまれ、日本でも多くのファンを持つ人気ドライバーでした。

マーカス・グロンホルムは、困難を乗り越えてWRCの頂点に立ち、数々の伝説を残したドライバーです。彼の活躍は、これからもラリーファンに語り継がれることでしょう。

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