ヒュー・ブラウン

ヒュー・ブラウン

ヒュー・ブラウン氏は、1957年にイギリス・北アイルランドで生まれた人物で、現在は日本伝道隊に所属する宣教師として日本で活動しています。しかし、彼の歩みは極めて異色であり、過去にはテロ組織の一員であったという壮絶な経歴を持っています。

テロリストとして生きた日々

ベルファストで生まれたブラウン氏は、北アイルランド紛争が激化していた時代に青年期を過ごしました。わずか15歳だった1972年には、アルスター・ロイヤリズム系のテロ組織であるアルスター義勇軍（UVF）に加わります。彼は組織内で活動的な役割を担い、銀行強盗や爆弾を用いた攻撃など、様々なテロ行為に関与しました。その活動はエスカレートし、やがてUVFの一部隊のリーダーを務めるまでになります。しかし、18歳になった時、銀行強盗の容疑で逮捕され、政治犯として扱われます。法廷での判決は懲役6年という重い実刑で、彼は悪名高いメイズ刑務所に収監されることとなりました。

刑務所での回心と新たな志

刑務所での服役中に、彼の人生は決定的な転換期を迎えます。1977年5月、20歳の時に刑務所内で上映された映画『ベン・ハー』を鑑賞したことが、そのきっかけでした。映画に描かれた主人公の苦悩と信仰の道が、ブラウン氏の心に深く響き、深い精神的体験を経てキリスト教徒へと回心したのです。この時、彼は過去の自分と決別し、将来日本へ渡って宣教師として生きることを強く志すようになりました。1978年に刑務所を出所した後、ブラウン氏はイギリス国内にある神学校で集中的に学びを深め、宣教師となるための準備を着実に進めました。

日本での宣教活動と試練

神学校での学びを終えた後、ブラウン氏は日本での伝道活動を開始します。1985年（昭和60年）、日本伝道隊の宣教師として、妻と子どもたちと共に日本へ移住しました。初めての赴任地は神戸で、現地の教会を拠点に地域社会での宣教活動を展開しました。

しかし、1995年（平成7年）1月17日、関西地方を未曽有の規模の地震が襲います。ブラウン氏一家も神戸で阪神・淡路大震災に被災しました。彼らは住まいを失い、3ヶ月間にわたる避難生活を送ることを余儀なくされます。この過酷な経験は、ブラウン氏にとって大きな試練であると同時に、宣教師としての使命感をさらに深める機会ともなりました。しかし、震災の影響もあり、一家は一時的にイギリスへ帰国することを決断しました。

再来日と社会への働きかけ

一度は帰国したものの、ブラウン氏は日本での宣教活動への強い思いを捨てることができませんでした。そして1997年（平成9年）、彼は再び日本へ戻る決意をします。今度は単身での赴任となり、兵庫県揖保川町（現在のたつの市）にある日本伝道隊の西播磨教会に宣教師として赴任しました。

西播磨教会での活動に加え、ブラウン氏は自身のユニークな経歴を活かした社会貢献活動にも力を入れています。特に、非行に走ってしまった若者たちの更生を支援したり、少年院や刑務所などを訪れて自身の壮絶な過去からの回心、そして人生の再生について語る講演活動は、多くの人々に希望と変化の可能性を示しています。

さらに、2007年（平成19年）からは、元暴力団員たちが中心となって結成された伝道団体「ミッション・バラバ」の相談役も務めるなど、活動の幅を広げています。かつて社会の影の部分で生きた経験を持つ彼の言葉は、同じような困難を抱える人々にとって、深い共感と信頼を持って受け止められています。ヒュー・ブラウン氏の人生は、人間の持つ回復力と、信仰がもたらす変革の力を証ししていると言えるでしょう。

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