回心

回心とは

回心（かいしん、英: conversion）とは、神に背いている状態から、自らの罪を認め、神に立ち返る個人的な信仰体験を指す言葉です。この言葉は、キリスト教用語として作られた造語であり、日本語訳の「回心」は、英語の「conversion」に対応します。ただし、キリスト教に限らず、他の宗教における同様の体験を指す場合もあります。

仏教における「回心（えしん）」とは直接的な関係はありません。

日本語の由来

日本語の「回心」という言葉は、日本基督教会の指導者であった植村正久が、自身の機関紙「福音新報」において、英語の「conversion」の訳語として初めて用いた造語です。

キリスト教における回心

聖書の用語

旧約聖書では、「シューブ」（「向きを変える」「帰る」の意味）と「ナハーム」（悲しみの感情を伴って悔い改める）というヘブル語が用いられています。新約聖書では、「エピストゥレフォー」（方向転換して戻る）と「metanoeo メタノエオー」（悔い改める）というギリシア語が使われています。この「metanoeo」の名詞形が「metanoia メタノイア」（悔い改め）です。

カトリック教会

カトリック教会における回心は、一般的に使われる「改心」とは異なり、信者が自身の内面を見つめ直し、それまでとは異なる解釈や感じ方に変わることを意味します。これは、信者の心がイエス・キリストに支配されているか、悪魔に支配されているかを判断する基準となります。この変化は、頭を回す動作に例えられることから「回心」と表現され、神への回帰とも捉えられます。

プロテスタント

改革派

改革派神学では、回心は「悔い改め」と「信仰」という二つの要素から構成され、聖霊によって新生（再生）した人が回心すると考えます。新生は神の一方的な働きであり、人は受動的な存在です。回心も神の働きですが、人の能動性や主体性も含まれると解釈されます。また、改革派では、回心は一度限りのものとする見解と、聖書に基づいて二度目の回心を認める見解があります。

ウエスレアン・アルミニアン神学

ウエスレアン・アルミニアン神学では、形式的に信仰を持つ人が、心から信じるようになる体験を「第二の回心」と呼ぶことがあります。

正教会

正教会では、回心を神との一致の始まりであり、生涯続く新生の感動と捉えます。回心は、恩寵に至るための一段階ではなく、神との一致を渇望する人の恒常的な態度であり、洗礼後に神から与えられる「第二の誕生」であるとされます。回心は、高慢や無知から「恩恵の状態にある」と考えるファリサイ派的な心の状態とは対照的です。

シリアのイサアクは、「回心は、救いを願う罪人にも義人にも常にふさわしいものであり、完全になることに終わりはない」と述べています。また、ダマスコのイオアンは、「回心とは、人間性に反するものから、人間性に固有なものへ、悪魔の支配から神へと立ち返ることである」と述べています。

脚注

参考文献

『植村正久と其の時代』佐波亘 教文館
『聖書の教理』改訂新版 尾山令仁 羊群社
『新聖書辞典』いのちのことば社
『キリスト教と自由主義神学』 ジョン・グレッサム・メイチェン
『キリスト教東方の神秘思想』ウラジーミル・ロースキイ著、宮本久雄訳、勁草書房（1986年10月）ISBN 9784326100668

関連項目

パウロ
信仰義認
改宗
* キリスト教用語一覧

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