ヒラー山

ヒラー山と啓示の洞窟

ヒラー山（ヒラーの洞窟）は、サウジアラビアのマッカの北東約5キロメートルの位置にある岩山です。その頂上には、預言者ムハンマドが初めて神の啓示を受けたとされる洞窟があります。この場所はイスラム教徒にとって特別な意味を持ち、「力の夜」と呼ばれる重要な出来事がここで起こりました。

ムハンマドの生い立ち

ムハンマドは、アラビア半島の商業都市マッカに生まれ、幼少期に両親を亡くし、主に祖父や叔父のもとで成長しました。商人として成功し、25歳でハディージャという富裕な女性と結婚しました。彼との結婚生活において、彼は2人の息子と4人の娘をもうけましたが、息子たちは早世しました。

ヒラー山での啓示

結婚後、ムハンマドは商人としての生活の合間に、ヒラー山で瞑想にふける時間を持ちました。610年のラマダーン月の27日、彼が洞窟で瞑想している最中に、急に神秘的な体験が彼に訪れます。何者かに身体を締め付けられ、「読め」と命じられるのです。ムハンマドはその命令に対して「読めない」と答えましたが、繰り返し命じられるにつれてついに啓示を受け、この時が彼の預言者としての使命の始まりとなりました。

この体験は、大天使ジブリールからのものであり、彼に向けて唯一神（アッラーフ）の言葉が伝えられた瞬間でした。初めて啓示を受けたことで、ムハンマドは混乱し、恐れを感じましたが、妻ハディージャが彼を支え、従兄弟のワラカ・イブン・ナウファルに相談することで、彼の体験が孤独なものではないことを知ります。ナウファルは、過去にも神の声を聞いた預言者たちが存在したことを教え、ムハンマドに向けての啓示は特別なものであると伝えました。

イスラム教の始まり

すると、ムハンマドは周囲の近しい人々、特に妻ハディージャや従兄弟アリー・イブン・アビー＝ターリブ、友人アブー＝バクルに啓示の内容を教え始めました。これがイスラム教の始まりを告げる重要な瞬間でした。ヒラーの洞窟での啓示の夜は、イスラムの教義において「力の夜」と称され、クルアーンの中にはこの夜が千月よりも優れていると記されています。

ヒラー山の巡礼

現在、ヒラー山は多くのムスリムが巡礼に訪れる聖なる地となっていますが、山の入口には「この山は本来は神聖視されるべきものではない」という注意書きが掲げられています。訪問者には、ヒラー山の歴史とその重要性を理解し、謙虚にその神秘的な空間を感じ取ることが求められます。

ヒラー山とその洞窟は、イスラム教の教義と信仰において大変重要な役割を果たし、今日でも多くの人々にとって心の拠り所となっています。

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