ヒルムシロ

ヒルムシロとは

ヒルムシロ（蛭蓆、学名: Potamogeton distinctus）は、単子葉植物に分類されるヒルムシロ科ヒルムシロ属の水草です。水面に葉を浮かべる浮葉性の植物で、ヒルムシロ属の中でも特に浮葉をよく展開する種を指します。

特徴

葉

ヒルムシロの最も特徴的な点は、その葉の形です。水面に楕円形の葉を浮かべ、その表面はつやがあり、水をはじく性質を持っています。葉の色は、表側が黒っぽく、裏側が赤っぽく見えるのが特徴です。また、水面下には細長い水中葉を出し、水面付近に達すると浮葉を形成します。浮葉は長さ5～10cm、幅2～4cm程度で、先がやや尖っています。これらの葉は、節ごとに互い違いに生えますが、花序のつく部分では対生することもあります。

茎と地下茎

地下茎は泥の中を横に這い、そこから水中に茎を伸ばします。茎には節があり、各節から葉が出ます。また、秋になると茎の先端が肥大して芋状になり、越冬するための芽を形成します。

花

夏以降には、葉の付け根から花柄が伸び、その先に棒状の花穂をつけます。開花時には花穂は水面から直立しますが、花が終わると横向きになり水中に沈みます。

生育環境

ヒルムシロは、穏やかな流れのある場所でも生育できますが、池のような止水域にもよく見られます。浮葉の形状は、これらの環境への適応の結果と考えられています。

分布

日本国内では、北海道から琉球列島まで広く分布しています。国外では、朝鮮半島、中国、ミャンマーなどアジア地域に分布しています。かつては水田周辺でも見られましたが、現在ではほとんど姿を消しています。

名前

「ヒルムシロ」という名前は、葉を水面に浮かべる様子を、蛭（ひる）が休息する筵（むしろ）に見立てたことに由来すると言われています。

利用と影響

ヒルムシロは、特に人間によって利用されることはありません。水田においては雑草として扱われることもありますが、近年では除草剤の普及により影響は少なくなっています。

近縁種

ヒルムシロ属の植物はすべて水草で、全世界に約100種、日本には18種ほどが存在します。これらのうち、浮葉を出すものと、沈水性のものがあります。明確な浮葉を持つものがヒルムシロと呼ばれますが、浮葉を少ししか出さない種も存在します。

ヒルムシロによく似た種

• - フトヒルムシロ (Potamogeton fryeri A. Bennett)
• - オヒルムシロ (Potamogeton natans L.)

小型種

• - コバノヒルムシロ (Potamogeton cristatus Regel et Maack): 浮葉の長さが2-2.5cmと小型
• - ホソバミズヒキモ (Potamogeton octandrus Poiret)

関連項目

• - ヒルムシロ属

まとめ

ヒルムシロは、その独特な葉の形状や生育環境から、水生植物の中でも興味深い存在です。水辺を散策する際には、ぜひその姿を探してみてください。

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