ヒーロー (駆逐艦)

イギリス海軍駆逐艦「ヒーロー」：地中海と大西洋の戦場を駆け抜けた艦の生涯

1936年、イギリス海軍に編入されたH級駆逐艦「ヒーロー」(HMS Hero)は、その後の第二次世界大戦において、地中海から大西洋まで広範囲にわたる作戦に参加した艦として知られています。建造費は政府支給品を除き約25万ポンドにのぼりました。

スペイン内戦と初期の活動

竣工後、「ヒーロー」は地中海艦隊の第2駆逐艦戦隊に配属され、スペイン内戦ではスペイン沿岸での哨戒任務に就きました。その後、1939年にはイギリスで修理を行い、地中海、シエラレオネと転戦。ドイツの通商破壊艦の捜索にも従事しました。1940年にはイギリスに戻り、再び修理を受けたのち、母港を移し、本国艦隊に転属となりました。

ノルウェーの戦いと地中海での激戦

1940年4月、ウィルフレッド作戦において、「ヒーロー」はノルウェーヴェストフィヨルドへの機雷敷設を支援する巡洋戦艦「レナウン」を護衛しました。同月8日には、ノルウェーBud沖への機雷敷設を装った偽装作戦にも参加、その後、第2次ナルヴィク海戦にも参戦しました。5月には地中海へ転属。7月にはスパダ岬沖海戦に参加、イタリア軽巡洋艦と激戦を繰り広げました。この戦闘で「ヒーロー」はイタリア軽巡洋艦「バルトロメオ・コレオーニ」の撃沈に貢献しました。

その後も地中海での作戦行動は続き、8月には「ホスタイル」の触雷事故発生時の救助や処分にも携わっています。さらに、同年9月にはハッツ作戦、11月にはマルタ島で修理を受けました。同年12月には、ドイツ巡洋艦「アドミラル・ヒッパー」の攻撃を受けた船団の救助にも参加しました。1941年1月にはヴィシーフランス船団の拿捕にも関与。同年中は、地中海での作戦行動が続き、クレタ島からの撤退作戦では、ギリシャ国王とその随員を脱出させる任務も遂行しました。 また、トブルクへの船団護衛任務にも多く従事しています。同年10月には護衛中の敷設巡洋艦「ラトナ」が空襲を受け被弾炎上した際に、救助活動を行いながら被弾するなど、危険な任務を遂行しました。

大西洋での活動とカナダ海軍への移籍

1942年には、シルテ湾海戦に参加し、ドイツ潜水艦「U568」を撃沈しました。同年6月にはヴィガラス作戦にも参加、潜水母艦「メドウェイ」の撃沈事故では多くの生存者を救助しました。また、同年8月には雷撃を受けた輸送船「プリンセス・マーガリート」からの生存者救助にも成功しました。10月にはドイツ潜水艦「U559」を撃沈するなど、活躍を続けました。その後、護衛駆逐艦への改装のため、イギリスへ帰還。1943年4月から11月にかけて改装工事が行われた後、カナダ海軍に譲渡され、「ショーディエール」(HMCS Chaudière)と改名されました。

カナダ海軍での活躍と退役

カナダ海軍に所属後も、「ショーディエール」は大西洋での護衛任務に就き、ドイツ潜水艦「U744」、「U621」、「U984」の撃沈に貢献しました。しかし、1945年終戦時には艦齢と損傷のため、カナダ海軍艦艇の中で最も状態が悪いと判断され、余剰艦艇として処分されました。1945年8月に退役し、解体されたのは1950年でした。

「ヒーロー」/「ショーディエール」は、スペイン内戦から終戦まで、数々の戦闘に参加し、多くの船舶や乗員の救助に貢献した、激動の時代を生き抜いた駆逐艦でした。その艦歴は、第二次世界大戦における海軍の戦いと、連合国勝利への貢献を象徴的に示すものです。

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