ヒ81船団

ヒ81船団の歴史と航海

ヒ81船団（ヒ81せんだん）は、1944年11月から12月にかけて太平洋戦争の一環として日本からシンガポールへの航海を行った護送船団です。この船団は単なる石油輸送だけでなく、日本陸軍の第23師団をフィリピンのレイテ島へ輸送する任務も担っていました。これは、レイテ島地上戦に臨むための重要な兵力強化策の一部でした。ヒ81船団は、北九州の門司を出発し、シンガポールを目指した際、特にアメリカ海軍の潜水艦に対する強力な護衛を持つ特徴的な船団でした。

船団の編成と任務

ヒ81船団はその名の通り、81番目の護送船団であり、フィリピン戦線の急務に応えるために編成されました。元々は高速タンカーを中心とした船団でしたが、途中から軍隊輸送船が追加されることで、その役割が拡大しました。具体的には、第23師団を及び特攻兵器を持つ海上挺進部隊が搭乗していました。この背景には、アメリカ軍の攻撃にさらされているフィリピンの防衛を強化するという日本の戦略的意図がありました。

航海の過程

出港したヒ81船団は、当初予定された航路を変更しながらも厳戒体制で進みました。しかし、アメリカ海軍の潜水艦部隊による攻撃が待ち受けていました。11月15日、陸軍特種船あきつ丸がクイーンフィッシュによって攻撃され、急速に沈没しました。この事故により2576人の乗員のうち2000人以上が命を落とすという大惨事が発生しました。後続の船団は生き残った乗員を救助しつつ、航路を変更しました。

その後もアメリカ潜水艦の猛攻が続き、11月17日に摩耶山丸が撃沈され、さらに神鷹空母も同日に潜水艦スペードフィッシュによって攻撃される悲劇がありました。これにより多くの乗組員が戦死し、護衛のためのあらゆる努力も実を結ばなくなりました。生き残った船は必死の思いで救助を求め、かろうじて泗礁山泊地に到着し、再度の出発の準備を進めました。

船団の結果と意義

ヒ81船団は、最終的に目的地のシンガポールに到着するものの、犠牲者数は膨大でした。第23師団は大幅な戦力低下を余儀なくされ、戦闘の前に多くの精鋭兵を失う結果となりました。この損害は大本営に衝撃を与え、その後のフィリピン戦線に対する戦略的な見直しを促すきっかけとなりました。

ヒ81船団は、その戦歴から見ても重要な意味を持つ船団であり、アメリカ海軍との海戦がもたらした結果がいかに日本の戦争遂行に影響を与えたかの一端を示しています。また、石油の輸送という重要な任務も果たせた一方で、戦力の損失という痛手を伴ったこの航海は、太平洋戦争の中でのひとつの象徴的な出来事とも言えるでしょう。

もう一度検索