摩耶山丸

摩耶山丸の概要

摩耶山丸（まやさんまる）は、日本陸軍が三井物産船舶部名義で1942年に竣工させた揚陸艦です。上陸用舟艇を運搬するための母艦機能があり、当時の陸軍特種船として大きな役割を果たしました。太平洋戦争中、主に後方支援として部隊の輸送に使用されましたが、1944年にはアメリカ海軍潜水艦の攻撃を受け、3000人以上の兵士が命を落とすという悲劇に見舞われました。

建造の背景

日本陸軍は1934年に「神州丸」を建造し、その成功を受けて次の陸軍特種船のモデルとなる艦船のシリーズを計画しました。しかし、平時から多くの大型船を維持することが予算上難しいことから、民間の船会社に建造を依頼し、有事の際に徴用するという方法を採用しました。その中の一隻として、摩耶山丸が三井物産船舶部に発注され、当時の玉造船所で起工されました。1942年12月14日または19日に竣工し、陸軍特種船の名に値する設計がされていました。

観察すると、摩耶山丸は陸軍特種船の基本形の甲型に属し、商船の形をしているため、敵にその正体を隠すことができるよう設計されています。船体内は上陸用舟艇を迅速に発進させることができる全通甲板が敷かれており、兵員居住エリアには多くの舷窓が設けられています。船倉口は4か所あり、特に2番・3番倉口には大発動艇を収納できるように設計されています。また、輸送能力は設計上1955人ですが、実際には4500人を超える兵士を輸送することもありました。

運用と戦歴

摩耶山丸は予想以上の早さで実戦に投入されることとなり、1942年12月30日に初航海を行いました。その後、宇品からラバウルやパラオ、シンガポールなどへと部隊輸送を果たし、戦闘が熾烈化する中でも任務を遂行し続けました。また、1943年5月には仲間の船がアメリカ潜水艦に撃沈されるなど、多くの危険を体験しました。

1944年11月、摩耶山丸は最期の航海を迎えることになります。ヒ81船団に参加し、マニラに向かう途中でアメリカ潜水艦「ピクーダ」の攻撃を受けました。攻撃によって機関室と船体後部に魚雷が命中し、艦船は急激に浸水。その結果、数分後には沈没してしまいました。生存者の話や記録によれば、戦死者は55人から3437人まで様々な報告があり、激しい戦闘が引き起こした悲劇を物語っています。

まとめ

摩耶山丸はその短い運用期間にもかかわらず、太平洋戦争で重要な任務を担いました。多くの兵士を輸送した背景にあった命の重さと、戦争の惨劇を考える上で、摩耶山丸の歴史は非常に重要です。彼らの犠牲を通じて、戦争の残酷さや大切な人々を失うことの悲しみを再認識する機会となるでしょう。

もう一度検索