ビギニングス (アンブローズ・スレイドのアルバム)

アンブローズ・スレイドの原点『ビギニングス』

『ビギニングス』（Beginnings）は、スレイドの実質的なデビュー・アルバムとして、1969年にフォンタナ・レコードからリリースされました。しかし、全英アルバムチャートにはランクインせず、アメリカでは『Ballzy』というタイトルで発売されました。その後、『Beginnings of Slade』と改題され再発されましたが、権利上の問題ですぐに回収されるという経緯を辿っています。

背景とリリース

1966年にイン・ビトゥイーンズとして結成されたスレイドは、シングル制作やライブ活動を通じて着実に人気を集めていました。1969年、フィリップス・レコードのA&R担当者ジャック・ババーストックが彼らのデモ音源を聴き、契約に関心を示します。バンドは契約に合意し、ババーストックの提案でバンド名をアンブローズ・スレイドに改名しました。

アルバムのレコーディングは、エンジニアのロジャー・ウェイクと共にフィリップス・スタジオで行われました。ババーストックは、彼らの自作曲をより多く作るように勧め、その結果「ローチ・ダディ」「ピティ・ザ・マザー」「ジェネシス」が生まれました。しかし、アルバムを構成するには自作曲が不足していたため、ライブで演奏していた他のアーティストのカバー曲も収録されました。

レコーディング中、アンブローズ・スレイドはチャス・チャンドラーと出会い、彼のマネジメントを受けることになります。チャンドラーは、アルバムの出来に満足せず、自作曲を増やし、バンドのイメージを変えることが成功に繋がると考えました。その後、バンドはポリドール・レコードと契約し、1971年にブレイクを果たしました。

楽曲について

『ビギニングス』には、スレイドのオリジナル曲と、ステッペンウルフ、ムーディー・ブルース、ビートルズなど、様々なアーティストのカバー曲が収録されています。

ジェネシス: バンド全員で作曲したインストゥルメンタル。後に歌詞が追加され、「ノウ・フー・ユー・アー」として再録音されました。
エブリバディズ・ネクスト・ワン: ステッペンウルフのカバー。
ノッキング・ネイルズ・イントゥ・マイ・ハウス: アイドル・レースのカバー。
ローチ・ダディ: メンバー全員で作曲。シングル『ジェネシス』のB面にも収録。
エイント・ガット・ノー・ハート: マザーズ・オブ・インヴェンションのカバー。
ピティ・ザ・マザー: ホルダーとリーが初めて共作した楽曲。リーのエレクトリック・ヴァイオリンがフィーチャーされています。
マッド・ドッグ・コール: インストゥルメンタル。
フライ・ミー・ハイ: ムーディー・ブルースのカバー。
イフ・ジス・ワールド・ワー・マイン・ディド: マーヴィン・ゲイとタミー・テレルのデュエット曲のカバー。
マーサ・マイ・ディア: ビートルズのカバー。リーがヴァイオリンを演奏。
ボーン・トゥ・ビー・ワイルド: ステッペンウルフのカバー。ライブ・アルバム『Slade Alive』にも収録。
ジャーニー・トゥ・ザ・センター・オブ・ザ・マインド: アンボイ・デュークスのカバー。

まとめ

『ビギニングス』は、スレイドの初期の音楽性を知る上で貴重な作品です。後のグラムロック路線とは異なる、フォーク、ブルース、ロックンロールが混ざり合ったサウンドは、彼らの音楽的なルーツを垣間見ることができます。アルバムとしては商業的な成功を収められませんでしたが、スレイドがその後の成功を掴むための礎となったことは間違いありません。

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