ビクーニャ

ビクーニャ (Vicugna vicugna)

ビクーニャは、南アメリカのアンデス山脈に生息する小型の偶蹄類であり、ラクダ科の一員です。体長は約120から190センチメートル、肩高は70から110センチメートル、体重は最大で50キログラムにも達します。この種はラクダ科の中で最も小型であり、外見はグアナコによく似ていますが、ビクーニャの頸の下には長い毛が特徴的で、一目で見分けることができます。

分布

ビクーニャは、アルゼンチン北西部、チリ北部、ペルー南部、ボリビア西部、さらにエクアドルに再導入されています。彼らは高地の寒冷な環境に適応しており、通常は3500メートル以上の高所で生活しています。

分類

ビクーニャはアルパカ、ラマ、グアナコと近縁で、これらはすべてラクダ科に属します。これらの種の間には複雑な類縁関係があり、ビクーニャとアルパカはビクーニャ属に、他の2種はラマ属に分類されるとされています。一般的には、アルパカはビクーニャから家畜化された種と考えられていますが、その分類については意見が分かれています。

人間との関係

ビクーニャの毛質は非常に細く、高級織物の原料として重宝されています。特にかつてのインカ帝国時代から続く伝統的な毛刈りの技術が根付いており、1993年に復活したことにより、ビクーニャを殺すことなく体毛を刈り取ることが可能になりました。この方法により、最高品質の毛が得られていますが、毛を刈る頻度は2年に一度と制限されています。産出される毛の量は成獣1頭から250から350グラム程度であり、そのためビクーニャの毛製品は非常に高価です。

かつて、ビクーニャの個体数は200万頭とも推定されていましたが、乱獲によって1960年代には1万頭を下回りました。しかし、保護活動の成果もあり、現在ではペルーでの生息数は21万8000頭に回復しています。それでもなお、密猟や生息地の破壊、他の家畜との競争などの脅威にさらされています。そのため、ビクーニャは1975年に発効したワシントン条約において保護対象とされています。

毛織物の特性

ビクーニャの体毛は、動物界でも非常に細く、太さは100分の1ミリメートルとされています。このような毛は糸として紡がれ、非常に柔らかい織物が作られます。1980年代以前、日本ではこれらの織物が「ヴィゴーニュ」として知られていましたが、最近では「ビクーニャ」という名前が一般的になってきています。

呼称

ビクーニャの名前は、古代アンデスのケチュア語に由来しています。日本ではこの動物を「ビクーニャ」と呼び、その毛から作られた製品はしばしば「ビキューナ」と表現されます。また、「ヴィゴーニュ」という名はフランス語からきたもので、これらの製品はビクーニャの一種の毛織物と区別されています。歴史的にも文化的価値の高いビクーニャは、ペルーの国章にも描かれている重要な動物です。

もう一度検索