ビゲロー・エアロスペース

ビゲロー・エアロスペースとは

ビゲロー・エアロスペース（Bigelow Aerospace）は、アメリカ合衆国の宇宙ベンチャー企業で、膨張式の宇宙ステーションモジュールを開発していました。ホテル王として知られるロバート・ビゲローによって1999年に設立され、ネバダ州ノースラスベガスに本社を構えています。

膨張式モジュールの特徴

膨張式宇宙構造物の最大の利点は、ロケットの打ち上げ時のサイズ制限を受けないことです。また、軽量化も可能であり、軌道上で膨らませることで、宇宙飛行士に広大な居住空間を提供できます。この技術は元々、NASAのトランスハブ計画として提案・開発されていましたが、計画中止後、ビゲロー・エアロスペースがNASAと契約し、技術を商業化しました。

開発の歴史と現状

ビゲロー・エアロスペースは、実験モジュールの打ち上げを行っていましたが、民間有人宇宙船の開発遅延などの影響もあり、本格的な有人モジュールの打ち上げには至っていません。2020年3月には、新型コロナウイルス感染症の流行による事業制限のため、従業員全員が一時解雇されました。2024年現在、打ち上げなどの発表はなく、事実上活動は停止状態にあります。

モジュール開発の軌跡

ビゲロー・エアロスペースは、これまでにいくつかのモジュールを開発・打ち上げました。

ジェネシスIとII:
2006年と2007年に打ち上げられた実験モジュールです。これらのモジュールは、膨張式構造の展開や宇宙環境での耐久性などを試験するために使用されました。
ギャラクシーモジュール:
2008年に完成しましたが、打ち上げ費用の高騰により打ち上げには至っていません。このモジュールの技術は、ジェネシスIとIIの成功によって部分的に実証されています。
BEAM (Bigelow Expandable Activity Module):
NASAとの契約に基づいて開発された、国際[[宇宙ステーション]]（ISS）に接続する試験モジュールです。2016年に打ち上げられ、ISSのロボットアームで結合し、空気を注入して展開されました。このモジュールは、2年間かけて宇宙環境での耐久性や安全性を試験されました。

ジェネシスIの詳細

2006年7月12日に打ち上げられたジェネシスIは、ドニエプルロケットによって予定された軌道に投入され、与圧部の膨張や太陽電池パネルの展開に成功しました。このミッションでは、宇宙船の梱包や展開手順、スペースデブリなどに対する耐性などが試験され、5年間にわたる観測が行われる予定でした。当時のビゲロー社の弁護士は、「早期に、頻繁に飛ばす」ことをモットーに、次の打ち上げ計画を迅速に進めると述べていました。

BEAMの詳細

BEAMは、全長4m、直径3.2m、重さ1,360kgのインフレータブル構造の試験モジュールです。2016年4月8日にドラゴン補給船で打ち上げられ、同年5月28日に展開されました。2年間の試験期間中、空気のリーク量や構造の健全性、放射線や温度変化の影響などのデータを取得しました。試験終了後は荷物置き場として使用され、2021年12月には所有権がNASAに移管されました。

ビゲロー商業用宇宙ステーションの構想

ビゲロー・エアロスペースは、複数のモジュールを組み合わせた商業宇宙ステーションの建設を計画していました。この計画は、民間有人宇宙飛行の遅延によって何度か見直されていますが、2018年時点では、2021年に2機のBA 330モジュールを地球低軌道に打ち上げる構想が示されていました。

ビゲロー・スペース・オペレーションズ (BSO):
2018年2月に設立された、宇宙ステーションの運用とサービスの販売を行う新会社です。
初期の構想:
2010年時点の構想では、宇宙ステーションはサンダンサーとBA 330の2種類の膨張式モジュール、ドッキングノード、推進装置、太陽電池アレイ、乗員用宇宙船で構成される予定でした。
スペース・コンプレックス・アルファとブラボー:
初期構成は、2機のサンダンサーと1機のBA 330からなる「スペース・コンプレックス・アルファ」として計画されました。より大型の「スペース・コンプレックス・ブラボー」は、4機のBA 330で構成され、2016年の打ち上げを目指していました。

国際的な協力

ビゲロー・エアロスペースは、商業宇宙ステーションの施設利用に関して、イギリス、オランダ、オーストラリア、シンガポール、日本、スウェーデンなど、複数の国と合意を結んでいました。

過去の構想

2005年当時の構想では、世界初の宇宙ホテルとして「CSSスカイウォーカー」という宇宙ステーションが計画されていました。このステーションは、複数のノーチラス居住モジュール（後のBA 330）から構成され、惑星間空間や月軌道への移動も可能とされていました。

将来の展望

ビゲロー・エアロスペースは、市場の拡大を期待して、将来的には10以上の宇宙ステーションを建設したいと述べていましたが、現在の状況は厳しい状態です。しかし、同社が開発した膨張式モジュールの技術は、今後の宇宙開発において重要な役割を果たす可能性を秘めています。

関連項目

宇宙旅行
宇宙ステーション
エクスカリバー・アルマース
ギャラクティック・スイート

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